第9話 放課後の再診と、慎重なる「再配置」
放課後の第2理科準備室。
夕日が差し込む静かな室内で、僕は一人、葛藤していた。
(……昨日覚えた『脂肪再配置』、これ、昨日は何も考えず使ってしまったけど、そのまま使ったらマズくないか?)
もし、一瞬でカップ数が変わるような変化を起こしてしまったら。
本人が驚くのはいいとして、周囲の人間が気づかないはずがない。「高木くんにマッサージされたら胸が大きくなった」なんて噂が広まれば、僕は一瞬で注目の的……最悪、変な研究機関とかに連れて行かれるかもしれない。
(……慎重に。あくまで、マッサージで姿勢が良くなったからそう見える、くらいの範囲に留めないと)
僕は自分に言い聞かせ、目の前のワイシャツ姿の彼女――みゆきさんに向き直った。
「あの、高木くん。……お願いしてもいいかな?」
「……うん。少し、いつもより念入りにやるね。肩こりの原因を根本から流す感じで」
【スキル発動:マッサージ Lv3 + 脂肪再配置(微調整モード)】
僕は意識してスキルの出力を絞った。
まずはいつも通り、ガチガチに固まった肩甲骨周りを解きほぐしていく。
「んっ……ふぁ……。やっぱり、すごい……。高木くんの指が当たるところから、力が抜けていくのがわかるよ……」
彼女がトロンとした表情で声を漏らす。
ここからが本番だ。僕は肩こりの重圧となっているバスト周辺のリンパを流しながら、ごく僅かな脂肪の流動を促した。
脇腹に溜まった不要な肉を、本来あるべき胸の土台へと、ミリ単位で、慎重に「移動」させていく。
「……っ!? あ、れ……? 何だろう、今の感覚……。すごく熱いのが、ゆっくり動いたような……」
「……リンパが流れてる証拠だよ。少し、圧をかけるね」
僕は「脂肪を増やす」のではなく「位置を整える」ことに専念した。
垂れ下がっていた負荷を、ほんの少しだけ上方へ。外側に逃げていたラインを、ほんの少しだけ中央へ。
職人が細工を施すような、極めて繊細な指先のコントロール。
「……はぁ、はぁっ……。なんだか、胸のあたりが、ずっとポカポカして……変な感じ……」
彼女の肌がうっすらと汗ばみ、ワイシャツが背中に張り付く。
その生々しい感触に理性が悲鳴を上げるが、僕は「バレたら終わりだ」という恐怖をブレーキにして、必死で指先を制御し続けた。
「……はい。今日はこれくらいかな」
手を離すと、彼女は夢から覚めたように瞬きをして、ゆっくりと立ち上がった。
「……あ。……あ、すごい! 肩が、嘘みたいに軽いよ。全然違和感がない!」
彼女は肩を回して喜び、次にふと、自分の胸元に手を当てた。
「……? あれ、なんだろう。なんだか、少し……」
「……?」
「……気のせいかな。なんだか、いつもより下着がフィットしてるっていうか。胸の位置が、ちょっとだけ高くなった気がする……? 背筋が伸びたからかな?」
彼女は鏡がないのを残念そうにしながら、不思議そうに自分の体を触っている。
「劇的な変化」ではない。でも、本人だけが気づく「心地よい違和感」。
「……姿勢が良くなると、バストラインも綺麗に見えるって言うし。そのせいじゃないかな」
「……そっか。そうだよね。……でも、本当に不思議。高木くんにしてもらうと、自分が女の子としてアップデートされたみたいな気分になるよ」
彼女は照れくさそうに笑い、潤んだ瞳で僕を見つめた。
その「少しの違和感」が、彼女の中に僕への消えない執着を植え付けていることに、僕はまだ気づいていなかった。
【現在の実績】
累積施術人数:6人
獲得経験値:180exp
ボーナスまで:あと94人
……バレないように、慎重に。
でも、その「加減」が逆に、相手をじわじわと依存させていくことになるとは、この時の僕は思いもしなかったんだ。
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