第6話 トップアイドルの休息と、禁断の指先
「……準備はいい、翔太? 失礼のないようにね。今日のお客様は、この国の『宝』なんだから」
次の日の「癒しの手」の店内。
叔母の恵美さんの声が、いつもより数段低い。
案内されたVIPルームは、完全防音。壁は厚い吸音材で覆われ、柔らかな間接照明が、これから起こる「非日常」を予感させていた。
コンコン、とドアがノックされる。
「失礼するわ……」
入ってきたのは、帽子を深く被り、大きなマスクで顔を隠した小柄な女性だった。
だが、その隙間から覗く瞳の輝きだけで、室内の空気が一変したのがわかる。
彼女が帽子とマスクを取った瞬間、僕は息を呑んだ。
一ノ瀬(いちのせ)れいな。
国民的アイドルグループ『ルミナス・セブン』の不動のセンター。
テレビや広告で見ない日はない、現代の象徴(アイコン)とも言える美少女が、今、僕の目の前に立っていた。
「……男の人? 恵美さん、こんなの聞いてないですけど」
鈴の音のような、でも少し警戒の混じった冷ややかな声。
彼女の視線が、僕の野暮ったい眼鏡と猫背を射抜く。
「ごめんなさいね、れいなちゃん。でも、この子の腕は私が保証するわ。世界一の休養が必要なあなたには、彼が絶対に必要なの」
恵美さんに促され、れいなさんは不服そうに奥の更衣室へ向かった。
数分後。
「……お待たせ」
戻ってきた彼女の姿に、僕は心臓が止まるかと思った。
貸し出したのは、例のシルクサテンの施術着。
光沢のある薄いエメラルドグリーンの生地が、彼女の華奢な体のラインを露骨に強調している。
サテン特有の滑らかな質感が、動くたびに彼女の白い肌の上を滑り、インナーをつけていないのか、その……繊細な突起や柔らかな曲線が、布越しに生々しく浮かび上がっていた。
「……ほら、なにぼーっと見てるの?早く始めて」
彼女は頬を赤らめ、うつ伏せにベッドに横たわった。
僕は震える手で、彼女の細い背中に触れた。
【スキル発動:マッサージ Lv2】
指が彼女の肌に触れた瞬間、僕の脳内に膨大な情報が流れ込む。
(……これはひどい。全身の筋肉が、折れそうなほど張り詰めてる)
ダンスの練習、センターとしての重圧、睡眠不足。
彼女の体は、限界をとうに超えていた。
僕は覚悟を決め、指先にエネルギーを集中させた。
「――っ!? あ……」
一箇所、肩甲骨のキワを指圧した瞬間、彼女の背中が弓なりに反った。
「え、ちょっと……何、これ……っ。熱い……身体が、溶けそうに……」
彼女の透き通るような肌が、みるみるうちに薔薇色に染まっていく。
僕はスキルの「美容効果」と「快楽効果」をブレンドし、丁寧に、でも深く、彼女の疲労の芯へとアプローチした。
「ふあ……っ、あぁ……。そこ、だめ……っ、頭が、真っ白に……っ!」
防音室の中に、トップアイドルの、決してファンには聞かせられないような甘い声が響く。
サテンの生地が彼女の汗で肌に吸い付き、僕が動かす指の動きに合わせてクシュクシュと艶めかしい音を立てる。
彼女は苦しげに、でも抗えない快楽に身を委ねるように、シーツをギュッと握りしめていた。
デトックス効果で、溜まっていた老廃物が汗とともに一気に流れ出す。
それと同時に、彼女の全身から力が抜け、とろとろに溶けたキャラメルのようにベッドへ沈み込んでいく。
「……すご、い。こんなの、初めて……。高木くん……あなたの指、魔法……みたい……」
彼女の呼吸は熱く、乱れている。
僕は、ベッドの上で完全に脱力している彼女の腰からヒップにかけて、重力の負担を消し去るように優しく掌を滑らせた。
サテン越しの柔らかな感触。
トップアイドルの「聖域」に触れているという背徳感と、純粋に彼女を救いたいという使命感が混ざり合い、僕自身の理性も限界を迎えそうだった。
一時間の施術が終わる頃。
一ノ瀬れいなさんは、まるで生まれたてのような、潤んだ瞳で僕を見つめていた。
「……身体が、信じられないくらい軽い。肌も……嘘みたいにツヤツヤしてる」
鏡を見た彼女は、その劇的な変化に息を呑んだ。
くすみは消え、表情には神々しいまでの透明感が戻っている。
「ねえ?君、名前は?」
「あ……高木です。」
「そう。高木くんね。……これ、私のプライベート用の番号。次、予約する時は、直接連絡してもいい?」
彼女は、少し照れ臭そうに、小さな紙切れを僕の手のひらに握らせた。
トップアイドルからの直通連絡先。
それは、どんなボーナススキルよりも刺激的なプレゼントだった。
【現在の実績】
累積施術人数:5人(一ノ瀬れいな)
獲得経験値:300exp(VIPボーナス+満足度MAX)
【レベルアップ!】
基本スキル:マッサージ Lv3
新効果:効果持続時間延長(1時間→2時間)
ボーナスまで:あと95人
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