第3話 次世代への哀愁歌

 だが、その後に現れた

 若き将軍「赤獅子ジャバロン」


 聞けばまだ20歳ぐらいの若造......


 かなり強いと言う前評判も、

 オスマトルの閃光の冠を付けた軍隊と、

 それを率いて来た、

 大将軍と言われたヒキガエルがあの程度では......


 戦狼は今回もあっさり潰すつもりだった。

 

「 ぬ!?これは?......」

 しかしコイツらは明らかに違う.....

 初めて「手応え」を感じた。


 風に乗ってくるのは、

 若く熱い血の匂い……


 剣を握る手に、自然と力が入る。


「 ほほうw......」

 戦いは苛烈を極めたが、

 シャルークは次第にジャバロンの才覚に目を細める。


 それは箱入りに育ててしまった娘が事もあろうに、

 敵の赤頭と遭遇してしまった上に、

 魅了されて帰って来たからでは断じて無い!


 あの時の娘の頰は赤く、

 目が潤み輝いて、

 手に触れれば熱い……

 あの赤頭の匂いが、かすかに残っている気がして、

 頭に来ちゃったのを思い出す。

「 ぶっちゃけ、やっぱ捻り潰したろか?

あの赤頭は!www」


「 いや!待てワシ!」

 ある意味、我が愛娘ミリアはたった一人で、

 オスマトルの猛将と言われる赤頭の部隊を撃退し、

 我々の不意を突く挟撃から救った。


 まるで神話に出てくる伝説の戦乙女フレイ様ではないか?


 年を重ねる毎に周囲の変化や感情に疎くなっている自身に、

 若き頃の心の猛りが蘇ってくる。


「 負けてしまえば、それはただの負けだ......

しかしこの戦は勝っても負け筋だな......」


 自分の理屈で動けないなら、

 それは最初から負けているのと同じだ。


「 よし!やるなら、とことん演じて、

叩き込んでやろうぞ!

ガキンちょ共が!www 」


 老王の瞳が希望に満ちた少年のような、

 輝きを放つ。


 それは、老いた胸に、若き日の風が吹き抜けるような感覚。


 走馬灯のように遠くから聞こえる盟友たちの笑い声が、

 彼の乾きつつあった魂に、

 再び熱い火を付けるのであった。

 

「 どれ?だれが用兵しているのか?......

生意気な......

久しぶりにワクワクするのう www

とことん遊んでやろうぞ!

どれ?次の手は..... 」

 

 こうしてジャバロン軍は戦狼のイタズラ心もあり、真の強さを手に入れる。


 ジャバロン達がそれを実感し始めた頃、

 彼等はシャルークを打ち破った。


 しかも、剣を交えた末に生まれたのは、

 憎しみではなく、深い友情。


 老王は官軍の使者として現れた2人の男に

「目に入れても痛くない」双子の娘の姉妹を嫁がせ、

 オスマトルの属国となる道を選んだ。


 アブーと相方が誕生して3歳の時に戦狼と言われた祖父でもあるその男は亡くなり、

 戦略上ジャバロン軍はサロスからアハルの拠点移動となる。


シャルークの真の目論見。


 戦狼は、ただジャバロンを敵として見たわけではない。


 彼は手合わせしてから、

 この若き将を「育て」、

 西の無敗の帝王バディーや大国ラハビアから半島諸国を守る盾にしようとしていた。

 

 愛する娘が敵大将と会ってしまい、

 心を奪われて帰ってくると言う、

 ハプニングもあったが、

 度重なる引き分けと連戦は、

 シャルークがジャバロンに半島の未来を託すためのもの。


 打ち破られた末に生まれた友情と婚姻は、

 すべて老王の目論見通り。


 双子の姉妹を嫁がせ、

 ジャバロンを僻地へ左遷させようとする、

 オスマトル将校たちの画策を察知し、

 それを利用しサロスの地に引き込んだのは、

 あの不測だった事件も原因の一つ。


 しかし更なる中央の陰謀から遠ざけ、

 ゆっくりと力を蓄えさせるため。


 シャルークの死後、

 ジャバロンはアハルで港を甦らせ、

 経済の力で国を守る道を選んだ。


 ——これが、シャルークの世界観で次世代に遺した「最後の盾」。

 アブーの血に流れる戦狼は、

 祖父の目論見を、知らずに継いでいるのかもしれない。

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エバーレコードパーツ じいじ編 行雲 日千羽 @peekabooAkhal

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