第六章 告白
「認めます」
白石は震える声で言った。
「全て、私がやりました」
ドーム内に重い沈黙が降りた。
「なぜ、コメントを残したのですか?」神崎が静かに尋ねた。
白石は涙を流しながら答えた。
「娘に...いつか、真実を知ってほしかった。父親が何のために戦ったのか。たとえ、こんな形であっても」
「桐谷館長を殺すことが、戦いだったのですか?」
「違う」白石は首を振った。
「私は、正しい方法で戦おうとした。法的手段で。でも、全て無駄だった。桐谷は権力を使って、私を黙らせた。裁判所も、学会も、誰も私の言葉を信じなかった」
「それでも、殺人は正当化されません」
「分かっています」白石は頷いた。
「でも、もう限界だった。妻も娘も失い、名誉も奪われた。私には何も残っていなかった。ただ、憎しみだけが」
神崎は深いため息をついた。
「最初から全て話してください。計画の全てを」
白石は全てを語り始めた。
三ヶ月前から準備を始めたこと。電子工学の本を読み漁り、遠隔操作装置の設計を学んだこと。部品を別々の店から購入し、自分で組み立てたこと。
深夜、施設に侵入して装置を設置したこと。何度もテストを重ねたこと。そして、上映当日のこと。
「睡眠薬は、抵抗を抑えるためでした。完全に眠らせるほどではなく、ただ力を奪う程度の量」
「なぜ、わざわざ席を立ったのですか?」神崎が尋ねた。
「それが私の最大のミスでした」白石は苦笑した。
「私は考えすぎた。もし装置が発見されたら、その時刻にアリバイがあれば無罪を主張できると思った。でも、それが逆に疑いを深めることになった」
「アリバイを作りすぎた」
「そうです。普通の人間なら、偶然トイレに行っただけだと主張できる。でも、私は計画的に行動しすぎた。タイミングが完璧すぎた」
神崎は頷いた。
「そして、プログラムにコメントを残した。これも感情的な判断でした」
「娘に...何かを残したかった。たとえ、父親が犯罪者になっても、その理由だけは知ってほしかった」
白石は泣き崩れた。
「私は愚かでした。復讐は何も解決しない。それどころか、さらに多くのものを失うだけだ」
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