第2話 終わってる生活力

「『料理をしてくれる魔法コクレール』」


 杖の先にある鍋やおたまがひとりでに動き出した。


 それを確認するとニアは振り返り、掃除具に杖を向け唱える。


「『掃除をしてくれる魔法プリフィカーレ』」


 すると、先程と同様に自動で部屋を片付けてくれる。


「なぁ、家事くらいならわざわざ魔法使ってまでしなくてもいいんじゃねぇの?魔女様よ」


 ここ数日間の関係ではあるが、ニアのまともな家事を見たことがないルクスは彼女の生活力の無さを心配した。


「こっちの方が楽だから。それに魔力なら腐るほどあるし」


「ただの自慢じゃねぇか!…初めて会った時から思ってたがアンタ、魔力切れたこと無いだろ?」


「だって、そんな大きな魔法使わないし」


「一昨日、最上位魔法連発してた奴が何言ってんだよ」


 まずまずの前提条件がニアと一般人では異なりすぎている。だからお互いの常識がほぼ噛み合わない。


「ま、そんなことはいいんだけど。とにかく定期的に魔力発散しないと気分悪くなるんだよね」


「魔力総量が多すぎても不便なんだな」


「どちらかと言うと便利なことの方が多い」


「んな事は誰でもわかるわ!」


 ニアは大量の魔力を体内に持つと同時に定期にある程度の魔法を使って魔力を発散しないと体調が悪化する特殊体質。彼女はこの体質のことを魔力過多と名付けている。


「…それにしても、ニアはなんでこんな人気の無いところに住んでんだ?結構不便じゃね?」


「それは…」


「それは?」


「私、極度の人見知りだから」


「は?」


「え?」


「は?」


「え?」


 三回目まではこのやり取りはやらせない。とルクスはツッコミを入れることにした。


「アンタ十賢聖なんだろ!?最強の大魔道士が引きこもってて国は許してくれてんのかよ!?」


「この家…王様が手配してくれたの」


「あぁ…バリバリに許されてたわ」


「だから、基本的に人がここに来ることは無──」


「ヴァニッシュー!いるかー?」


「「え」」


 玄関の外から聞こえたその声にニアとルクスは言い合いを止めた。


「ルクス、絶対に音を立てないで。死ぬほど面倒なことになるから」


「わ…わかった」


「あれー?留守かー?」


 ニアは昔からの最強戦法である居留守を使うことにした。これならいくらデリカシーが欠如している人間でも諦めて帰るはず──。


「なんだ。いるじゃん」


 普通に入ってきやがった。


「な……何用ですか?ル…ルーナさん」


「そんな警戒すんなって。ただお仕事の話をしに来ただけだから」


 それが面倒なんだよ!何で大災害防いだ数日後にまた働かされるんだ。


「ニア、何かそのルーナって人の後ろにすんごい人見えるんだけど」


「何?ルクス。そのすんごい人って」


「おやおや、目が良い魔従者だね」


 優しく、暖かい声でルーナの後ろから現れたのは──。


「え!?お…お…王様?」

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