第4話 拾ってください。お役に立ちます。


足元のクレーターは気になるけど、とりあえず一人ぼっちは寂しい。


「あの、私、行くところもないので、お二人に付いて行ってもいいですか?」

「いや、私たちこれからギルドの依頼があるから……」


ステラさんは困ったように眉を下げた。えー、そんなこと言わずに。


「依頼ってなんですか?」

「『七色草』の採取じゃ。珍しい薬草でな、特定の場所にしか生えんのじゃよ」


ティアさんがそう説明してくれた瞬間、私はあ、っと思った。さっきこの辺をキョロキョロしてた時に、なんかキラキラした草があったんだよね。


「七色草? もしかして、これですか? なんか綺麗だったので、さっき座り込んだついでに摘んでおきました」


私はカバンから、えっと、どこだっけな。なんか、深いな。ただの学生鞄なのだけど。

あったあった。

虹色に光る草をひと束取り出した。


「これですよね」

「「はぁぁぁぁぁっ!?」」


二人の声がハモった。え、何、そんなに驚くこと?


「へ、どっから持ってきたのよそれ!?」

「ほら、あそこの丘の上。いっぱい咲いてましたよ?」


私が指差した先。

ステラさんが目を細めて、ずーっと遠く、地平線のかなたにある丘を見て……顔を引き攣らせた。


「……ねえ、リン。あそこ、ここから数キロはあるわよ? 往復するだけで半日はかかる場所なんだけど……」

「へ? そうですか? すぐですよ? ちょっとタタタッて行って、シュバッて摘むだけですし」


猫耳が生えたせいかな、今の私には歩くのも走るのも、あんまり変わらない感覚なんだよね。


「ティア、この子……やっぱりおかしいわ。素早さもカンストしてるって言ってたけど、これ、もしかして……」

「くっくっく、面白い。これなら次の依頼も一瞬で終わるかもしれんのう」


ティアさんが悪い顔をして笑った。

よし、役に立てるならもっと取ってきますよ!


「それなら、あそこの分、全部摘んで来ちゃいましょうか。ステラさんも一緒に行きましょう! 案内します!」

「え? ちょっと、待っ――」


私はステラさんの柔らかそうな手をギュッと掴んだ。可愛いい手だ、すりすりしたい。

って、そんなことをしている場合じゃない。

ステラさんは慌ててティアさんの手を掴んで、芋蔓(いもづる)式に三人が繋がる。


「行きますよ。しっかり離さないでくださいね。舌、噛まないように気をつけてくださーい!」

「待ちなさいリン! そのまさか――」


ステラさんの叫びが終わる前に、私は地面を蹴った。

「トントン」の時と同じくらいの力で。


「出発進行ーーっ!!」

ドッゴォォォォォン!!!

「ミギャあああああああああああああああああ!? やめてぇぇぇえええええええ!!」


視界が真っ白になる。

景色が線になって後ろに消えていく。

ステラさんの悲鳴が、置き去りにした音速の壁の向こうから聞こえてきた気がした。


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