第2話 猫耳、爆誕。そして自分、可愛すぎでしょう〜


茂みがガサガサ揺れた時、私は覚悟した。

不審者か、はたまた野生の熊か。忍者を目指す身として、竹刀(練習用)で応戦すべきか……!


「おや、こんなところに妙な格好の娘がおるぞ?」


現れたのは、小さな女の子だった。

私より背が低いくらいだけど、なんだか話し方がお年寄りみたい。……っていうか、着ている服がファンタジー映画の魔法使いみたいで、すごく凝ってる。コスプレ?


「ティア、どうし……たの?」


女の子の後ろから、もう一人現れた。

今度はすらっと背の高い、大人の女の人だ。

……えっ、待って。耳が長い。あと、胸がすごい。私の頭くらいある。

驚きのあまり、私は立ち上がろうとして――。


「イタッ!」


忘れてた。足首グネってたんだ。


「うむ、怪我をしておるようじゃな。これを飲むと良い。ポーションじゃ」


小さな子――ティアちゃんが、これまたファンタジーな小瓶を差し出してきた。

ポーション。聞いたことある。ゲームとかで飲むと回復するやつだ。


「ありがとうございます。いただきます!」


私は疑いもせず、一気に飲み干した。

味は、イチゴ味のシロップを炭酸で割って、最後にちょっとだけ苦い何かを混ぜたような不思議な味(まずいとも言う)。


「あ、ま、待って! ティア、それ……! ああ、遅かった……」


耳の長いお姉さんが焦った声を上げたけど、もう胃袋の中だ。

その瞬間。


「え?」


――ボボボンッ!


手品みたいに、私の体がピンク色の煙に包まれた。

煙が目に染みる! 何これ、爆破テロ!?


「おお、成功じゃ! 」

「ティア、またやったわね……。あんな怪しい試作薬を勝手に……」

「いや、普通にポーションじゃぞ、混ぜ物が入っておるが」

「その混ぜ物が、問題なんじゃ・・・」


ティアちゃんは鼻高々に笑い、お姉さんは頭を抱えている。

一体何が起きたんだろう。足の痛みは、すっかり消えてる。


「あの、一体何が……?」

「ほれ、見てみい」


ティアちゃんが差し出してきた手鏡を覗き込む。

そこには、見慣れた私の顔が写っていた。中学一年生、蒼凛。黒髪、黒目。

うん、今日も相変わらず普通に可愛い。……じゃなくて。


「頭の上じゃ」


言われるがままに、鏡を少し上にずらす。

そこには、ツンと尖った、黒い毛並みの三角形が二つ。


「あ、猫耳です。……可愛いです」


指で触ってみると、ふわっふわ。

しかも、自分の意思でピコピコ動く。え、これ筋肉繋がってる? リアルすぎない?


「ティア、またやったわね……」

「何を言うか。捻挫も治ったし、見た目も愛らしくなった。一石二鳥じゃ!」


状況が飲み込めないけど、お姉さんが怒っている理由はなんとなく分かった。

でも、私は鏡の中の自分から目が離せない。

お尻のあたりがムズムズすると思ったら、ジャージの隙間から生えるしなやかな黒い尻尾がゆらゆら揺れている。


「尻尾もある~~! 自分可愛すぎ~~!!」

乗ってみた。


猫的な何かも手に入れたのかな?

ラノベとかだと、猫の素早さとか、付与されるよね。

ま、可愛いから、おっけ。

しかもこれ、学校にしていったら絶対モテる。……あ、ここ学校じゃないんだっけ。


「……ま、いっか! 足も治ったし!」


私はその場でぴょんぴょんと跳ね回った。

体が軽い。信じられないくらい軽い。

呆れ顔の美人のエルフ(耳が長いからたぶんそう!)と、ドヤ顔のロリっ子。


私の「ワープ」した先は、どうやら思っていた以上にヘンなところみたいだった。

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