猟奇殺人の限界
「こりゃ猟奇殺人の限界を超えてやがる」数々の猟奇殺人を見てきたプロが言うのだから間違い無いのだろう。何度も何度も吐き、吐くものが無くなってやっと言葉が発せられるようになった。気分は赤ちゃんだ。喋りたいのに喋れない。犯人の残した不気味なオブジェは理解を拒んだ。とても人間の仕業とは思えない。クマに襲われた、だったらどれだけ平和的だっただろうか。ほんの数分で猟奇殺人の限界を超えたこの殺人はきっと歴史に残るのだろう。しかしその歴史的場面に立ち会えたことをここまで喜ばしく感じない事も中々無い。他のことならば何でも喜ぶのに。「なんでよりにもよって」思わず声が漏れた。震えているのがわかる。するとまた急激な吐き気に襲われた。しかし吐けども吐けども内容物はもう枯れてしまった。乾燥した声が漏れ出るだけだ。木には既に遺体は無いがそれでも幻影が見える程に、自分でもわかるほどに追い込まれていた。たまたま登山で山を登っていたところ物陰から腕が見え玩具だと思い回収しようとしたら本物だった。そしてその上には腐りかけの生首が刺さっていて余りの衝撃に気を失った。同行していた友人が電話を掛けて今に至ると言うことだ。何度聞いてもあまりにファンタジーに満ちていてとても現実に思えない。しかし実物を見てしまっては信じざる負えない。発見者の女性、神谷ミツヨさんが不憫でならない。その友人も実物を見てしまい気を失っている。犯人が敢えて選んだのだろうが一通りが殆ど無くごくたまに登山客が来るくらいだ。そのごくたまにが神谷ミツルさんだ。先輩の方を見ると隅々まで監視の目を欠かせない。本当に尊敬に値する。しかしその先輩が「こりゃ猟奇殺人の限界を超えたやがる」とまで言い切るのだから今回がいかに異例なのかが分かる。空はこの場の空気を汲んだようにどこまでも続く晴天だった。それがまた不気味でしょうがない。
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