瞳は嘘を語らない
腹を刺すとぷっと血が滲んできた。肋骨から指五本下のところから刃を突き刺す。そして柄を握りもう一方の手で体を抑える。握った手をゆっくりと下に下にスライドさせていく。断面は油まみれで黄色かった。白と黄のグラデーションは縞々の柄を思わせる。腹を開くと腐りかけの発酵臭のようなものが鼻を突く。思わず吐いてしまいそうなほどの異臭だ。中は綺麗に内臓が分けれていてまるでパズルのようだ。最初は肝臓から決して鮮やかとは言えなくとも艶やかな赤はしっかりと残っている。下の方が黒ずみ灰色が顕著に現れている。恐らく受動喫煙というやつだろう。実際には吸っていなくとも吸っているような肝臓に変化するのだ。腸は特別匂いを発している。とてもじゃ無いが人間の匂いでは無い。おならや足の臭いなどとは比較にもならない圧倒的な生臭さ。まるでゴミを体内で飼っているようだ。何やら血ではない液体もトロトロと流れ出していて不気味なビジュアルにさらに奇怪さをプラスしている。取り戻しが付かないとわかっているのに矛盾した行動をとってしまう。腸はほのかに暖気を含んでいてカイロのようだ。中を開こうとする気力は疲れで削ぎ取られすっかり失せていた。心臓は役目を果たし静かに眠っている。立つと疲れがどっと襲ってきた。それでも気力を振り絞りなんとか立つ。近くの鋭利な枝に生首を飾りつける。センスを問われるので芸術的に。結局は枝に生首を刺し、その下に腕と足を浅く土に埋め込んだ。そして胴体は葉を詰め込み木に立てかけておいた。使用したレインコートやブーツなどをバックに仕舞い込み香水を掛けて匂いをできる限り消す。勿論自分にも振りかけて。怪しまれないように登山ルートからは外れた場所から逃げる。登山客に見つかって騒がれれば御の字だ。承認欲求の塊は中々治らずドキドキとして残り続けていた。生首はどこか虚空を見つめている。その目は見つけて欲しいと懇願しているように見えた。その一ヶ月後早くもその願いは叶う事になる。限りなく最悪の形で。
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