私は嘘つきです
タピオカ転売屋
第1話
私は嘘つきです。
それも、器用な嘘つきではありません。
すぐに見抜かれる嘘、あとになって思い返せば、誰のためにもなっていなかった嘘を、繰り返してきました。
その場をやり過ごすためだけの嘘です。
真実を語る勇気が、なかったのだと思います。
真実というものは、あまりにも正確で、あまりにも無遠慮です。
人の顔色など、少しも考えてくれない。
自分が何者でもないことを、認めるのが怖かったのです。
ウソで飾られた私の物語は、いつしか私の手を離れていきました。
ウソだけが独り歩きしてしまったのです。
そのウソを守るために、またウソをつく。
そのウソを守るために、またウソをつく。
私にも、どれがウソでどれが本当のことなのか、わからなくなっていきました。
整合性をつけるために、すべてをウソで拭うようになったのです。
そうして出来上がった私の人生は、どこを切り取っても偽物でした。
真実という刃に晒されることを恐れ、私は透明な繭の中に閉じこもってしまった。
その時、ふと思ったのです。
はたして誰がこれをウソだと言えるのだろうか。
私でさえわからないのに。
現実は、いつだって正しい。けれど、正しいだけで、誰も抱きしめてはくれません。
「お前は間違っている」「お前は無価値だ」
真実という光はあまりに強く、影に隠れた私の震えを容赦なく暴き立てる。
だから私は、この嘘の繭を愛することに決めました。
ここには、現実が与えてくれなかった優しさがあります。
誰にも望まれなかった私が、誰かに愛される物語があります。
整合性を守るために塗り潰したその空白にこそ、私の本当の祈りが宿っているのです。
真実という刃で傷だらけになるくらいなら、私は一生、この優しい嘘の中にいよう。
たとえ世界中のすべてが、私を偽物だと笑っても。
私は、嘘つきです。
そしてこの物語は、私が私であるために、最後についた嘘なのです。
私は嘘つきです タピオカ転売屋 @fdaihyou
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