第2話 最強賢者、魔法師団に招待される
「……就職先は自分で考えたいって、言ったはずだと思うけど」
俺は父の言葉を聞いて一番に、そう口に出した。
正直なところ、父の権力があれば、俺を何らかの研究職につけるのは簡単だとは思っていた。
ありがたい話ではある。
だが、それではちゃんとした研究者とはいえないだろう。
人間には、能力相応の仕事というものがある。
自分の力でつけない仕事に親の権力でついたところで、あまりいい人生は待っていないはずだ。
「自分で考えたいって……何か、やりたい仕事があるのか?」
「領地経営の手伝いとか、事務仕事とか……」
「お前に事務仕事をさせるほど、マギウス家は落ちぶれてはおらんよ」
俺の言葉を聞いて、父は鼻で笑った。
どうやら、俺に事務仕事をさせるつもりはないようだ。
「それと、もしかしたら勘違いしているかもしれないが……今回の仕事は、向こうから頼まれたんだ。お前を名指しで、紹介してほしいとな」
「一体どこの馬鹿が、俺なんかを雇いたがるんだ?」
今の話を聞いて、余計にその就職先への興味が失せた。
俺をなんかを雇いたがる時点で、ロクな人間ではない。
なにしろ俺は、魔法研究に関しては何の実績もなく、ただ『マギウス家の三男』という一点を除けば、世間に全く知られていない存在なのだ。
そんな俺を雇いたいなどと言う人間は、どうせ本人の能力には興味がなく、ただ『マギウス家』という名前を使いたいだけのクズに決まっている。
まあその仕事につけば、名義貸しの代金くらいはもらえるのだろうが……そのために自分の生まれ育った家を貶めるほど、俺は落ちぶれてはいない。
などと考えている途中で俺は、父が魔導具を持っているのに気がついた。
俺が大昔に設計した……『録音』の魔導具だ。
「今の言葉、録音させてもらったぞ」
「……こんな軽口を録音して、何の意味があるんだ?」
「お前がこの人を馬鹿呼ばわりしたっていう証拠になるな」
そう言って父ルインズは、俺に1枚の紙を見せる。
紙には、俺が先ほど、馬鹿呼ばわりした人間の名前が書かれていた。
――――――――――
招待状
ネイトン=マギウス
貴殿の功績および実力を認め、レオス王国魔法師団に招待する。
もし興味があれば、魔法師団まで連絡されたし。
レオス王国魔法師団 師団長 ネイトン=レイニール
――――――――――
「……は?」
「お前を雇いたがっているのは、魔法師団だ。……だが興味がないようなので、今の録音つきで断りの連絡を出しておこう」
そう言って父は、紙に『興味がないようです』と書き、魔導具と一緒に手紙に入れようとする。
もしこの魔導具が世に出回れば、俺の魔法研究職としての道は永遠に絶たれるだろう。
だが、それは一旦置いておこう。
それより気になることがある。
「待ってくれ。……なんで魔法師団が、俺なんかを雇いたがるんだ?」
「お前が優秀だからだな」
「優秀も何も……魔法師団は、俺が何をしてるかなんて知らないはずだろう?」
「魔導具の設計依頼には、魔法師団からのものもあっただろう? あの設計図が、師団長の目に止まったんだ」
……言われてみれば、魔法師団からの設計依頼はあったな。
だが、頼まれたものはごく基本的な魔法理論しか必要としない、簡単な魔導具だけだ。
あんなもので魔法師団に入れるなら、今ごろ魔法師団は何百万人ものメンバーを抱えているはずだ。
実際の魔法師団は1000人もいない精鋭部隊なので、そんなことは絶対に有り得ないのだが。
「まあ、お前がこれの依頼書を見れば、困惑するのは予想していたよ。お前は世間を知らなすぎるからな」
世間知らずと言われてしまうと、返す言葉もないな。
確かに俺は生まれてからこの歳になるまで、ほとんど領地から外に出ることもなく魔法の研究ばかりしていた。
俺ほど世間を知らない人間は、なかなかいないだろう。
とはいえ、自分が魔法師団に入れないことくらいは分かる。
「というわけで……魔法師団に一つだけ頼んでおいた。試験を受けさせてくれとな」
「……試験?」
「ああ。お前の実際の実力を見て、魔法師団員にふさわしいかどうか判断してもらうんだ。……そうでもなければ、ネイトンは私が権力を使って、お前を魔法師団に押し込んだとでも思うだろう?」
……この点に関しては、父の言う通りだ。
正直なところ、俺は今もこの招待状が、父の権力によって作られたものではないかと疑っている。
しかし、試験を受けたら受けたで、俺が受かるように細工をしているような可能性もある。
「ちなみに試験を受けないなら、先程の録音を……」
「受ける」
どうやら、断る選択肢はないようだ。
まあ、魔法師団が実際に俺の実力を見れば、流石に入団させる訳にはいかないと思うはずだ。
落ちるために試験を受けに行くのも微妙な気持ちだが……まあ、実力不相応な場所に権力だけで入るよりは、まだマシという気もするな。
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