第20話 「ケルト最後の魔法官」第一幕(記憶の欠片)

アレックスは病院に着くと待合室に向かった


案の定、エレナがそこにいた

エレナも迷わずアレックスを見つけた


「アレックス、あなたも」


エレナが立ち上がり近寄った


「エレナ、覚えているかい」


「ええ、私たちだけ時間が戻ったみたい」


アレックスは懐中時計を、エレナはペンダントを取り出した


「近づけるのはよそう」


「そうね、でもなぜ私たちだけ?」


「分からない」


「今まで気づかなかったけ

 この時計には細かなケルト文字が刻まれてる

 君のはどう?」


エレナもペンダントを見てうなずいた



「それはケルトの偉大な遺物の欠片だよ」

「ヴィクターさん?」


後ろの席に座っていたのはヴィクターだった


「すみません、盗み聞きしてしまって

 初めましてアレックス

 私、ヴィクターです」


「こちらこそ、彼女の知り合いのアレックスです」


「私はケルトの遺物を集めて

個展を開こうと思っているのですよ」


「出来ればお二人がお持ちのそれもお借りしたいです

 もちろん相応の対価をお支払いたします」


「ヴィクターさん、

これは人目をひくような宝飾品じゃないですよ」


「ケルトの大釜」

「えっ?」


ヴィクターはアレックスの懐中時計を指差した


「それはケルトの大釜の欠片だ」


アレックスは時計を握りしめる


「欠片?」


「九つあって、私が既に五つ持っている

 あなたの時計、エレナさんのペンダント

 さらにあと二つで完成する」


「ヴィクターさん、何のために」


ヴィクターは笑って言った


「言葉よりも確かな方法がある

 興味はあるかい?」


ヴィクターはアレックスが応える暇を与えず

懐中時計と自分の手を重ね合わせた


「何をするんですか、離して下さい」


アレックスの求めに応じずヴィクターは手を強く握りしめたまま続けた


「あなたもケルトの血を引いている

 気づいていないだけだ

 見るがいい、私たち民族が虐げられ

 他の民族に吸収されていった記憶を!」



青白い光に思わず目を閉じてしまった


再び目を開けると見覚えのない天井だった

豪華な装飾にシャンデリア


「ここは」


アレックスはベッドから起きてあたりを歩いた


「ヴィクターさん、さっきは……ッ!」


挙げた手は自分のようだった、洗面台に行き

鏡を見ると目の前にいたのはヴィクターだった


「何だ……入れ替わった?」


目の前の姿も、発する声もヴィクターそのものだった


(チャンスだ、ヴィクターのことを調べられる)


ヴィクターの屋敷は巨大だった

長く続く廊下には数々の絵画、彫刻


すれ違う執事には気づかれていない様子だった


「すまん、欠片のリストの資料はどこやったかな

 忘れてしまって」


「いつも金庫にしまっておられますが」


「それが開かなくなってしまって

 緊急用の鍵も普段使ってないから忘れてしまったんだ

 覚えてるか?」


「ええっと……確か」


「まず金庫のところへ行こう」


アレックスはヴィクターの体を使って金庫までたどりついた


「あの、ヴィクター様

 読み取り部分をきれいにしてから

 もう一度、認証してみるのはいかがでしょう?」


「そうだなやってみよう」


ピッという音とともにカチャっと解錠された音が聞こえた


「すまん、私が悪かったようだ

 ありがとう」


執事は一礼して部屋をあとにした


「地図に写真にメモ……欠片の場所」


そこにはリストがあった。

欠片①:懐中時計(場所不明)

欠片②:ペンダント(エレナ所持)

欠片③:コースター(場所不明)

欠片④:聖杯(修道院)

欠片⑤〜⑨:(ヴィクター所有)


「既に五つ、どうやら話は本当のようだな

 そしてこれらが、ヴィクターが集めた欠片」


(人格の入れ替わり、ヴィクターが言ってた民族の記憶

 わからないことばかりだ

 下手にこの欠片を隠したりしても彼がどう動くか分からない

 エレナなら何とかなるかもしれないが

 エレナのお母さんは病院から動けない……今は彼に従うしかないか)



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