第18話 「ケルト最後の魔法官」第一幕(転送開始)

「攻撃魔法陣展開

 広域空対地、炸裂薬、強度最大」


魔法官はそう言って天空に巨大な攻撃魔法陣を展開した

さらに禁忌魔法陣を二層展開し威力を高めようとした


「我はエイブラハムの友であり

 すべての聖なるものの代理人

 ここに硫黄と火を降らせたまえ」


魔法官は両手を天に突き上げて叫んだ


「Vis Ignis――ソゲリラ!」


空が真っ赤に燃えたと思った瞬間

数々の火の球が天から降り注ぎ

大地を赤く染めていった


「やべっ、やりすぎた!

 防御魔法陣展開――マルチナ・ダイヤモンド!」


すべてが吹き飛ばされ、蒸発していった……魔法官を除いて


「ケホッ……ゴホッ……オエッ

 いやーあの大量の魔虫みたいな奴ら

 二度とごめんだ

 おい、人面扉

 終わったぞ、早くだしてくれ」


魔法官の影から現れた人面扉は言った


『是非もない』



魔法官はインフェルノ・ハートの回廊を歩きながらつぶやいた


「そろそろ国に帰ろうかな、これ以上は無理だ

 致命傷を負って蛇になってしまう

 魔法官……知恵をつかさどる者……蛇の知恵……取り込まれた跡々」


彼はここにとどまり続けること、その末路に気づいていた


そこに新たな人面扉が現れた

魔法官は呆れて言った


「いや、君ねぇ

 もの凄く頑張ってたよね

 もういいじゃん、俺は国に帰って修道院で余生を送るの

 みんなとビールとソーセージ作って、毎日楽しく暮らすの

 俺、地元じゃ最強なの!

 ほっといてくれ」


『お前が身に着けているものが

 誰かが身に着けているものを

 呼んでいる

 これはミッションではない

 偉大で尊大で至高の魔術師テスラからの遺言

 お前はこのミッションを受けるのではない

 捧げることになるのだ』


「はい、帰りまーす

 こっちは連戦で疲れてんだよ

 早く転送しろよ

 気が向いたら、また遊びに来てやる」


『……』


「なーっんで黙るの

 どれだけここで危ない目に遭ってきたか分かってる?

 テスラだろうがマイクだろうが誰でもいいよ

 こんな狂人が作った館にはもう居たくないの!」


『……』


魔法官は少し後ずさりした


「人面扉がうるっとしてる……キモい」


『……』


「そう簡単に『はいわかりました。おおせのままに』って

 いうわけないだろ! 空気読め!!」


人面扉は歯を見せて笑った


『お前の希望は叶えられた

 繰り返す……これは“捧げ”なのだ

 ちなみに一切の魔法は使えない

 いったん魔法官としての記憶は消える

 そのつもりで……健闘を祈れ』


「ガーッデム! 人面扉

 そこは健闘を、お前が祈るんだろがぃ

 聞いてないぞ、こんなオプションツアー!!」


闇が叫ぶ彼を包み込み

いずこかへ連れ去っていった


「おい、おい、おいっ

 やめろ、やめろ、やめてくれ

 ビール! ソーセージ!!

 オクトーバーフェス!!!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る