第17話 ゼウスの最後
魔法官はミッションクリアのため扉の向こうへ
足をふみ入れていった
カツーン、カツーン、カツーン
カツ、カツ、カッ
薄暗い神殿に呼び出された
かつて世界の頂点にいた存在、ゼウス
玉座に座るゼウスは何かおぼろげで
かつての姿は見いだせない
「来てくれたか、魔法官」
声には威厳がなく頼りなかった
ゼウスは語る
「人々の私たちへの祈りが減っている
そのため私も含め、神々が薄まっているのだ
唯一の神をあがめることで
より豊かな生活を享受できるのだという」
(……)
「それは世界を覆いつつある……我らは
不要になりつつあるのだ」
その言葉には気持ちがなく
事実を述べているだけだ
だが魔法官はゼウスの哀しみを感じていた
ゼウスは続けた
「だがな、魔法官
人々から忘れられるのは困るな
語られたい
勝利の、失敗の、浮気の、嫉妬の、愛の物語
すべてをだ、どうしたらいい?」
ゼウスと魔法官はいろいろと意見を交わし
言葉を積み重ねていった
そしてゼウスは言った
「自分に関わった者たちを、星座にしてほしい
英雄や怪物を
愛した者、憎んだ者を
傷つけ、傷つけられた者たちすべてを」
星の連なりを依り代として使うというのだ
さっそく魔法官は自分が持っている
禁忌魔法を確認し、組み立てた
「ゼウスよ、この魔法は人々が星々をみて語り始めるまでだ
今までと何も変わらないぞ
人々が語り続けない限り、永くはもたない
それでもいいか?」
「是非もない……頼む」
魔法官はうなずくと魔法をとなえ
次々と神々を星の連なりに重ねていった
獅子
蟹
双子
牡牛
牡羊
魚
……
星が増えるほど、ゼウスの存在は次第に薄くなっていった
魔法官は異変に気づく
「ゼウス……なんだかおかしい
あなたの存在がほとんど感じられない」
ゼウスは笑いながらごまかした
「気のせいだ、自分の仕事に集中してくれ」
水瓶
山羊
射手
蠍
天秤
乙女
……
最後に残ったのは、ゼウスだけとなった
魔法官の魔力は尽きようとしていた
魔法官は叫ぶ
「ゼウス、あなたが最後だ
早く来て!」
ゼウスは立ち上がろうとするが
腰を上げることが出来なかった
「すまんな
もう星になれるほど
私に輝きは残されていない」
ゼウスは最初から自分を捨てるつもりだった
神々を星にするため自分の魂を切り分けていた
「それでも、あなたは星座になるべきだ
物語に主役がいないなんてありえない
あなた達がいなくなった後で
どうやって人々は愛を語るというのだ!」
「すまんな、魔法官よ」
「私は愛から生まれた人間だ
ここからは私のわがままだ
祈る神が代わろうが人間のエゴは変えられない
私がそれを証明する一番初めの人間になる!」
「魔法官よ何を言っているのか分からない
もう神ではないのだからわからない」
魔法官は自らを傷つけその血をすくって叫んだ
「禁忌魔法陣展開
我が命を何者かに捧げ、ゼウスを神々の元へ」
ゼウスは鷲となり夏の星の連なりに重ねあわされた
魔法官は膝から崩れ落ちた
手足の感覚は失せ
魂の欠片が肉体に張り付いているだけだった
星の輝きに照らされた魔法官の影から
人面扉が現れた
『例外なく蛇と化せ』
ボンッという音と煙が立ちのぼった
煙の中から出てきたのは白い蛇だった
細く、長く、音もなく這っていた
蛇の動きが止まったかと思うと
それはゆっくりとインフェルノ・ハートへ吸収された
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