第13話 【番外】破魔野の待ち時間
通学路にあるコンビニ
破魔野は書籍コーナーで雑誌を手に取っていた
不断野を転送させるためだ
店内に男子高校生が入ってくる
「うわっ……なんだあの美人」
破魔野が顔を上げた瞬間
男子高校生の膝がストンと崩れた
バタン
「お客様!?」
店員が駆け寄る
次の客も、また次の客も
破魔野を見た若い男性客は次々と倒れていく
(……)
「人間界の……特に若い男と呼ばれている生き物は
なぜこうも脆弱な魔力耐性しか持ち合わせていないのだ
私の魔力に触れただけで気絶している」
倒れた若い男性客たちが次々と起き上がる
「何があったんだ?」
「わからん……すごい夢見てた」
破魔野は窓の外を見つめた
視線を時計に落とす
もうすぐ不断野が通るはずの時間
(そろそろかな)
同じ頃、学校では岸辺が騒いでいた
「緊急召集だ!」
「どうした岸辺?」
「スカイフィッシュだ!
この近辺で目撃情報が相次いでいる!」
岸辺はスマホを掲げた
そこには監視カメラの映像が映っている
画面には長い棒状の残像が映っていた
「スカイフィッシュとは
高速で空中を飛び回る未確認生物の一種で
長い棒状の体と複数の小翼を持ち
その速さはスロー再生で初めて姿が確認されるほど」
「岸辺、それ……」
「そう、UMAだ!」
不断野は自分の席でぼんやりしていた
(あれ、それ俺じゃね?)
放課後、岸辺は通学路のコンビニ付近で捜索を開始した
「目撃情報が多いのはこの辺りのはず」
岸辺がしびれを切らした時
コンビニの中へ目をやった
「ハイトーン星人!?」
それは書籍コーナーに立つ破魔野だった
その佇まいは、あの時と同じだった
「前回は冥王星まで飛ばされたが
今回は違う!」
岸辺はコンビニに入り
陳列棚からサングラスを手に取った
レジで会計を済ませる
「2,980円になります」
「高い!」
店員に代金を払い
岸辺はその場でサングラスを装着
書籍コーナーに向かった
岸辺の存在に破魔野が気づき振り返る
岸辺と目が合った、その瞬間だった
岸辺の脳内にインフォメーションズが身勝手に流れ込んできた
『太陽系は天の川銀河の中心から約26,000光年離れた位置にあり
秒速230km(時速約83万km)という猛烈な速度で銀河中心を周回している
銀河を1周するには約2億2500万年かかり
この期間は「銀河年」と呼ぶのだ
太陽系の公転面(黄道面)は銀河の円盤面に対して約60度傾いている
これは太陽系形成時の偶然によるもので
地球をはじめとする惑星たちは
単純な平面運動ではなく立体的な螺旋運動を描いているのだ
具体的には、惑星は太陽の周りを公転しながら
(地球は1年で1周)その太陽自体が銀河を高速で周回しているため
「螺旋の上を螺旋が動く」という複雑な二重螺旋構造の軌道を描く
さらに太陽系は銀河面に対して上下に振動する運動もしており
数千万年周期で波打ちながら移動している
加えて、銀河系全体も秒速600kmで宇宙空間を移動しているため
私たちは想像を絶する複雑な動きで宇宙を旅し続けているのだ』
「ハイトーン星人、待ってくれ
僕の脳内バッファーがパンクしそうだ!」
岸辺はメモを取ろうとした
だがやめた
「メモを取るとかじゃないだろ
感じるんだ!
感じろ!感じろ!感じろ!キッシベー!」
岸辺はずり落ちたサングラスの隙間から
破魔野の瞳をとらえた
「はっ、あの時と同じ透明な瞳……からの冷涼感」
『Ki-Shi-Be』
岸辺は彼女にそう言われた気がした
「んぐっはぁ! おぽっ!!」
岸辺の身体が崩れ落ちる
店員が駆け寄る
「お客様! 大丈夫ですか!」
「また倒れた……今日何人目だ?」
「7人目です、店長」
マルチプル・スイングバイを成功させた
岸辺の魂は天の川銀河の中心にある
『いて座A*(エースター)』にいた
超大質量ブラックホールの前で
岸辺は宇宙の真理に触れようとしていた
(これが……ユニヴァース……下唇を前歯噛んでからの)
気がつくと岸辺はコンビニの床に寝ていた
「はっ、ハイトーン星人は?」
「え、誰のことですか?」
店員が不思議そうに聞く
破魔野は窓の外から
倒れた岸辺を見つめていた
「持ちこたえたようだがこいつも……弱だな」
その夜
岸辺は日記に書いた
『今日、二度目のコンタクトに成功
ハイトーン星人は銀河系の情報を直接伝達してきた
人類の理解を超えた存在
しかし、スカイフィッシュについては何も語らなかった
もしかしたら別の組織か?
調査を続ける』
翌日、岸辺は学校を休んだ
「岸辺、どうしたんだ?」
不断野が秀平に聞く
「知らね、でも昨日コンビニで倒れてたらしいぞ」
「あー、あのコンビニか
あそこ、よく人倒れてるよな」
「マジで?」
「うん、なんか書籍コーナーに
美人すぎる女の人がよくいて
男が次々倒れるって噂」
不断野はおにぎりを食べながら考えた
(あの人って破魔野さんかな?
そういえば俺も見たことあるような、ないような)
誰も繋がらない
それぞれの物語が交わることなく
ただ並行して流れていく
いつまでも
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