第12話 【番外】破魔野の残像(地味奈の円柱稽古)
「ない!
ない、ない、ない!
どこ?」
鞄の中を確認するも、探し物は見つからなかった
「私、地味奈の日記がない」
地味奈は毎朝、不断野への想いを日記に書いている
ドキドキを忘れないように
いつか告白する日のために
今日は終日ドキドキしていたかったので
学園に持ってきていたのだ
「見つからないものを見つける時
頼るべきは、ミスター岸辺しかいない!」
そういって地味奈は岸辺の所へ向かった
「地味奈どうした?」
「ミスター岸辺、任務よ」
何かを感じ取った岸辺は
表情が一変した
「地味奈、それ以上言うな!」
「ミスター岸辺、あなただけが頼りなの」
「わかってる
今回は古典的な手法が良いだろう
ダウジングだ」
「(意味不明だけど)わかったわ」
「今回はペンデュラムを使う」
「(使い方わからないけど)持てばいいのね」
そうして地味奈は岸辺のサポートを受けながら
日記を探し始めた
「地味奈、どうした?」
遠くから不断野が声をかけてきた
「な、なんでもない!」
地味奈の声が裏返る
その時だった
教室に通じる廊下でSNS担当の雄太が
何かを拾い上げた
「おっ、誰かの日記?
これ、バズるかも」
日記を開こうとする雄太に
地味奈の視界が一気に狭まった
ペンデュラムが日記を指し示す
(あれは私の日記)
それは脳裏に蘇る街路樹での
不断野の手に触れようとした
あの時の衝撃波
地味奈は身体の奥底から
何かが湧き上がるのを感じた
次の瞬間
地味奈の足が床を蹴っていた
「雄太君ッ!!」
一気に間合いを詰める
しかし踏み込みすぎた
身体の芯から力が放たれる
ドンッ!(あっ)
雄太の身体が宙を舞った
「うおおおお!?」
雄太は不断野を通り過ぎ、廊下の非常階段付近まで
まるでカーリングのストーンのように
滑走していった
「へっ、雄太があんなに遠くまで」
地味奈は床に落ちた日記に手を伸ばそうとしたが
先に不断野が日記を拾い上げていた
「これ、地味奈のか?」
地味奈の心臓が止まりそうになる
不断野が日記を開こうとする
「待って!」
地味奈が駆け寄る
足がもつれた
「うわっ」
不断野の胸に倒れ込む形になった
見上げると不断野の顔がすぐ近くにあった
(これはキュンなチャンス!)
破魔野の残像にあてたれた地味奈は
わけもわからず毎日、円柱に向かって
練習をしていた
(今ならわかるわ
この瞬間のために
あのエンタシス(円柱)があったのね!
今ならできる、今ならやれる)
地味奈の心臓が爆発しそうだった
「大丈夫? 日記、お前のだろ」
不断野が日記を手渡す
「ありがとう」
地味奈は受け取った日記を抱きしめ
一人たっていた
(不断野君と密着3.86秒、WR更新)
地味奈はそのまま自分の席に戻った
数日後の放課後
「地味奈、これ見る?」
雄太がスマホを差し出してきた
「何?」
画面には一枚の写真
不断野が地味奈を支えている瞬間で
まるでお姫様抱っこのような構図だった
「これさ、学園フォトコンテストに出そうと思って」
「ちょっと待って!」
そこにキレ女連が集まってきた
「地味奈、いい顔してる」
「不断野君、イケメンに映ってる」
地味奈の顔が真っ赤になる
「雄太君、これ」
「いい写真だろ? 俺の自信作
記念にあげるよ」
雄太は満足そうに笑った
その夜
地味奈は写真を見ながら
日記に書いた
『練習の成果は出せなかったけど
不断野君に抱きとめてもらった
それだけでいいんだ』
雄太の写真は後日
学園フォトコンテストで入賞した
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