第11話 【番外】破魔野の残像

キレ女連の恒例

朝の登校、褒め合いタイムが始まった


「おはです

 今日もおキレイだこと」

「まあ、佐々木さんこそ

 おキレイだわ」


でも今日は誰もが妙に真剣だった


「ねえ、昨日

 何かあった気がしない?」


「わかる……なんか…ものすごい敗北感」



放課後、人気のない廊下

地味奈は円柱の前にいた


「なんで私、ここにいるんだろ?」


気づけば背伸びをして円柱に向かって唇を近づけている


「えっ、私…何してるの!?」


慌てて周りを確認する

誰もいない


地味奈の心臓が跳ねる


気づけば円柱に視線が戻る


「私の脳裏には幽かに絶対美人の口元が……でもどうして?」


地味奈は再び円柱に視線を戻す


「不断野君に?

 でも、私そんな大胆な」


記憶が霧のようにぼやける


「気のせい…だよね」



同じ放課後

会議室に集まるキレ女連


議長が深刻な顔で口を開いた


「皆さん、感じていますね?」


全員がうなずく


「何か…圧倒的で絶対的な美が…暴力的にいた気がする」


「でも顔も名前も思い出せないの」


「昨日のSNS履歴を確認したけど、何も残ってない

 投稿も、コメントも、いいねも…全部、普通」


「何かに…負けた気がするわ

 でも何に負けたのかわからない」


議長は拳を握りしめた


「この敗北感は確かなものよ

 私たちは何かに遭遇した!」


沈黙が会議室を支配する


「対策を講じるべきでは?」


「でも相手が誰かわからないのよ?」


議長が立ち上がった


「では、決議を取ります

 提案:毎日の褒め合い頻度を3倍に増やす」


「それ、意味ある?」

「意味はない」


議長は真剣な目で全員を見渡した


「でも、私たちにできること他にあって?

 賛成の方」


沈黙の後、全員がゆっくりと手を挙げた


そしてまた次の日のこと


「今日もおキレイだこと」

「今日もおキレイだこと」

「今日もおキレイだこと」


地味奈は首をかしげた


「みんな…どうしたんだろ?」



誰も覚えていない

誰も知らない


でも確かに、何かがあった


残り続けている敗北感


キレ女連の褒め合いは今日も続く



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