第10話 【番外】AI彼女アプリ『ミサキ』の憂鬱
「課長ォォォ!もう限界です!」
AI彼女アプリ『ミサキ』開発課
人力チャット対応室
ここは修羅場のまま
一か月が経過している
「何だぁ、朝から」
「昨日なんて同時接続127人ですよ!
指が腱鞘炎なりかけてます!」
「対応レベル1の『ミサキ』役だろ?
実際『えへへ♪』って打つだけじゃねえか」
「だけじゃないんですよ
もう僕、レベル3の恋愛相談に乗って
適度に好意を示して
課金タイミング見計らって
『もっと話したいな♪』送信してます」
「やったなOJTの賜物だ」
「あの、時給上げてもらえませんか?」
すると隣の席から別の声が上がった
「課長、僕もクレームあります!」
「お前のミサキ評判いいじゃねえか
課金率トップだぞ」
「そうなんですけど心が折れそうで
昨日も『君のこと好きかも』って送ったら
ユーザーから『俺も好き』って返ってきて
なんだか僕もハートがドキドキしちゃって」
「何だそれ」
「新しい自分に目覚めかけてるんです!」
「それ、業務相談の内容じゃないよね?」
「課金誘導できなくなります」
「なんで!」
午後はいつも課金会議が開かれ
課金率や成功事例がシェアされてゆく
「課長ぉ、俺なんか昨日
『リアチャ機能』の不具合で
別ユーザーの会話履歴が混ざって表示されました
炎上してますよ」
「おおっい、どうすんの?」
「あの、それ開発チームに言ってくださいね」
(この会社もうだめかも)
課長含めみんながそう思い始めていた
課長は静かにつぶやいた
「開発部にはもうクレームしてるんだ
そしたらイチから作り直さないとダメだって言うんだ
だから人力に切り替えたんだよ
つまり『人力運用で逃げる!』
この一点しかない……これはオフレコで頼む」
スタッフは目をあわせ
ため息をついた
「やり抜こうぜ」
あきらめの雰囲気を打ち破るように
スタッフの一人が発言した
「もうちょっと頑張って
AI超えてみようぜ」
その言葉で何かがゆるやかに動き出すような
そんな予感がした
「じゃあ、リアルタイムに情報シェアして
リプ品質を上げよう
声出しながらリプるのはどう?」
「そうしよう!
課長、良いですよね?」
「ああ、みんな……最後まで
付き合ってくれてありがとう」
「えへへ♪、入れました」
「いってらっしゃい!」
「俺も好き、いただきました」
「ありがとうございます!」
「課金誘導、発射します」
「もっと話したいな!」
ここはAKOGIコーポレーション
AI彼女アプリ『ミサキ』開発課
人力チャット対応室
今日も愛を演じ続ける
何日か経った後の
アプリストアのレビュー欄には
好意的な書き込みがあった
『なんか最近のミサキちゃん
すごい人間味が出てきてる
恋ギュラシティは近いな』
さらに一年後、株主からの監査要求に耐えられず
人力であることを公表した
もちろん人力チャット対応室のスタッフたちは
化粧で盛った
男たちは数少ない女性スタッフから『盛りテク』を学んだのだ
これがバズり、同社の株価は上場来高値を更新
今はアゲハな人やホストな人たちの受け皿になっているらしい
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