第9話 【番外】フツーに考えて!チャクラ開かないから

「あともう少し……なんだ……ユニバースまでもう少し」


オカルト担当の岸辺、

彼はお昼ご飯を早々にすませ

残り時間のすべてを宇宙人との交信に費やしていた


(手が……しびれてきた……ピリピリする)


岸辺は70年代と90年代に流行し

オカルトブームの火付け役となった月刊誌

『ラー』の愛読者(※)だった

(※通称:ラー信)


それにはこう書かれてある


①両手を頭より高くかかげ、指先はじゃんけんのパーを作る

 目は閉じたまま開かないこと

②次第に手先がしびれてくるが我慢する

③両腕に宇宙人からのS波動がくる

 重力波を伴うので注意すること

④ここで持ちこたえるとP波動が来て腕が軽くなる

⑤ハイトーン星人と交信できるようになる

⑥これを繰り返すことで1926hzの第7チャクラが開き

 常時、宇宙と交信できるようになる

⑦これを108回繰り返すとすべてのチャクラが開く


今まさに岸辺はフェーズ③の真っただ中だった



不断野はというと

無理やり「読め!」と言われ押し付けられた

『ラー』の最終刊を返すべく岸辺を探していた

加えて夜更かしと風邪によって声が裏返っていた



「はっ!なんか腕が軽くなってきてる

 来てるP波動、フェーズ④だ!!」


「コホッ、ケホッ、イタイタ、サガシタヨ、キシベクン」


「(ハッ!)ハイトーン星人」


「ヤット……ミツケタヨ、キミカラノアズカリモノ、カエスネ」


(預かりものって、僕はまさか!)


「僕も帰りたい、本当の星に帰りたい

 こんなところでやりたくもない勉強とか

 親の世間体にビクビクしながら生活したくない」


「ナニヲ、イッテル、ケホッ、ジューブン、ヤリスギテル」


「違うんだ、ユニバースなんだよ

 僕は宇宙の真理に触れたいんだ

 神様になりたいとかマッドサイエンティストになって

 地球征服とかそういうんじゃないんだ」


「ナラ、タネガシマノ……ジャクサ……ゴホッ・ケホガハッ……ジャネ」


「ハイトーン星人、通信品質が落ちてる!

 まだ落ちないで、まだ聞きたいことが山ほどあるんだ

 ノストラダムスは噓っぱちなんだろ?

 マヤの予言もアカシックもご都合設定じゃないか

 そんなもん全部、蹴とばしてやる!!」


岸辺は力尽き

映画『プラトゥーン』のように崩れ落ちた


「また僕は置いてけぼりだ……どうして」


目の前には不断野に貸したはず最終刊があった

それは岸辺の涙で滲み始めていた


「あきらめるな! あきらめるな!

 あきらめるな、キッシベー!!

 間違いじゃない、嘘じゃない、

 JAXA種子島にハイトーン星人との通信拠点

 ハンガー(エリア21)がある

 まずは物理と英語を究めよう、そこからだ」


岸辺は数年後、天文学者となって海外のラボで働くようになる

彼のあだ名は『Hi-tone Kishibe』

21世紀になってWOW通信を再受信した人物として有名になった

今も彼は月刊誌『ラー』が編み出した

マニュアルによる交信手順を毎日踏んでいるという


岸辺よ、それは無理だが無理じゃなかった

誤解は理解の第一歩……そうなんだろ?



「……WOW……っ」



















※BGMはアエロスミスのドリーム・オンがおすすめです


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