第6話 転校美少女・紗里の魔法陣展開

午後の授業が始まろうとしていた

普段通り、お昼後でみんな眠い


食べ過ぎた者、夜更かした者、不断野もそこにいた


秀平、伊藤、雄太、岸辺、藤野、クラス長も、

そして地味奈も目撃者となった


国語の先生が誰かを伴って入室してきた


「はい、授業の前に転校生を紹介します」


(なぬっ! 転校生といえばイケメン・イケジョと相場が決まってる

 キャメラアプリ起動からの動画RECオン!!

 ※BGMはメトリカの『入口砂男』で適宜お願いします)


先生の少し後に続いて入室してきた


まずザワついたのは二次元担当の伊藤だった


「ミサキちゃん……ほんとにいたんだね

 控えめな絶対領域、サラサラロングな黒髪

 できればツインテールが……よか……っ」

ここで伊藤は気絶した


もちろんSNS担当の雄太はこの『映え』を見逃さなかった

しかし圧倒的な美を前に雄太の前に

彼のカメラアプリが落ちた


秀平は英単語の勉強中で

地味奈は不断野しか見ていなかったので

二人とも落ちなかった


不断野はいつも通り隠れてスマホいじりしていた


次に落ちたのはオカルト担当の岸辺だった

彼女の容姿ではない、真理にしか興味がない

外見は見ていない、彼はそんな邪悪な男じゃない


彼女は岸辺を少しだけ見た


『Ki-Shi-Be』


岸辺は彼女にそう言われた気がした


(透明な瞳……君はもしかしてハイトーン星人

 この冷涼感はまさか……こっ、

 これが……あの伝説のユニバフラッシュ)


意味不明な心の叫びの後

岸辺の魂は木星スインバイを成功させ

冥王星まで飛び、星になった


「破魔野 里紗(はまの りさ)

 よろしく」


「はい、もう授業の時間だから

 えーっと破魔野さんは不断野君の後ろで」


落ちずにザワついたままだったのが女子たちだった

タタタタタタッとスマホをタップする音がクラス中に響く


彼女たちは他クラスに緊急同報を打電していた

打電先は以下となる


『微ファンタ学園・あなた今日もおキレイだこと連盟』(略:キレ女連)


絶対的な美を前に『キレ女連』は存亡の危機に立たされた


ゆっくりと破魔野は着席のために不断野に近づいて行った

はずだった


誰もが破魔野の『次』に目を疑った


「解除魔法陣展開……相互認証発動」


破魔野が片手で髪をかき上げながら

つぶやいた次の瞬間だった


「え?」「なぜ?」


地味奈だけはちがった


「ウゴッ!……悔っ……でもそのアプローチいただきました

 次回、トライさせていただきます」


破魔野は何の躊躇もなく

不断野の頬に、軽く口づけをした


「解除確認……転送開始」


次の瞬間だった

二人の姿が、そこになかった


机も、椅子も、そのままだった

二人が抜け落ちていったみたいに


「ほら、みんな前向け

 今日はみんな大好き古典文法だぞ」


クラスは黒板に向き直る

チョークの音にまぎれ

スマホをいじる雑音


「不断野、また遅刻?」「いや、今日は欠席じゃね?」

「あいつ、ホントに大学行く気ないな」


笑いが起きる

今日も不断野がいなくてもクラスはまわっている


ただ、さっきまで確かにあったはずの違和感だけが、

誰の言葉にもならず、残っていた



(不断野君、好き)



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