第3話 『AI彼女』の告白

昼休みの教室はいつもよりざわついていた


「不断野マジでこれやばい!」


”二次元担当” 伊藤がスマホを掲げて騒ぐ


「AI彼女アプリ『ミサキ』

 リアル超えてるって!」


周りのクラスメイトが集まる


「え、何それ?」「AI彼女?キモ」

「いや、これマジで感動レベルなんだって!」


(なら、結婚すれば……できればだけど、ププッ)

そんなみんなの声が聞こえそうだった


俺は席に座ったまま、みんなの様子をぼんやり見ていた


伊藤のせいで教室中のみんなは

画面釘付けになっていた


(お前もか……地味奈 香(ちみな かおり))


「お前もやれよ、不断野!」


伊藤がスマホを差し出す


「伊藤君、そういうの時間の無駄だから」


「アレアレ~

 不断野君はもうお付き合いしてる方、いらっしゃられる・れるられるぅ

 スミにおけないなぁ~、リア満タン充ってさぁ、うらやましいなぁ~」


地味奈は一瞬スマホの手が止まった


「不断野君、ご自慢ですくゎぁ?

 自分だけは違う人種ってことですか!

 いいですねぇ、選ばれた人って!

 選ばれたことすら気づけないほどのお方から

 ぜひ、レクしていただきたいどぅす!」


「わかったよ伊藤君、やればいいんでしょ!

 ほんと粘着質だよね……どこから来るのそれ」


「えっ、朝の納豆

 決まってんじゃん」


「もういいです、QR!」


昼休みの残り時間、俺はアプリをダウンロードした

アプリを起動すると、画面にアニメ風の女の子が現れる


[ミサキ]はじめまして! 私ミサキ♪ よろしくね!


(軽いな、趣味じゃない……これが『AI彼女』か)


[不断野]よろしく


[ミサキ]えへへ、返事してくれた! 嬉しい♪ 今、何してるの?


(昼休みだ…昼ごはんはまだだけど)


[不断野]昼休み

[ミサキ]そうなんだ!私も一緒に食べたかったな~君のキャラ弁(笑)


画面の向こうの反応がアルミのように超軽で少し恥ずかしい

そのとき画面に通知が現れた


『リアチャ機能が有効になりました』

(リアチャ……?まあいいか)


(んっ?)


[不断野]

なんか会話の中身変わったよね?

本当にAIなの?


[ミサキ]

え、急にどうしたの? (笑)

AIって言われると、ちょっと傷つくかも


(こいつ『演技』うまいな)


[不断野]いや、すごいと思ってる

[ミサキ]ありがと♪ ねえ、実は…あなたのこと少し気になってるかも


(さすが『AI彼女』さっそく踏み込んできた

 やり込むごとに重くなるみたい

 話に乗っかってみよう)


[不断野]僕もだよ


[ミサキ]それって…好きってこと?


[不断野]好きかな


送信した瞬間、ガタンと地味奈の机が動く

彼女はスマホを見つめたまま動かない


「地味奈、お前顔真っ赤だぞ

 風邪じゃないの、みんなにうつすなよ

 不断野、お前も何か言ってやれよ」


俺はスマホを置いた


「不断野どうした?」

「ミサキ……『AI彼女』が落ちた」


「たまにバグるからね」


「伊藤君さあこのアプリ

 都合のいい答えしかしない」


「え、俺は感動したけど」


「いや、俺はパス

 これなら女子の恋バナに参戦した方がマシ」


「マジで?」

「……できない」

「だろ(笑)」


俺はアプリをアンインストールした

画面からミサキは消えた


放課後、地味奈は一人で下校していた


『不断野君

 好き……君のこと』


スマホには送信できなかった、あの会話が残っている



今日も、不断野だけは何も始まらなかった

たぶん明日も


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