第2話 痴漢っぽい人につぶやいてみる
改札付近で突然空気が割れた
「お前、うちの娘に何触ってんだよ!」
声の主はどう見ても本気のお父さんだった
ランドセルじゃない
別の学校の制服の子
どうやら付き添い通学らしい
次の瞬間、スーツの男が人波を割って走り出す
痴漢、たぶん少なくともそう呼ばれている人
駅が一気に動き出す
お父さん、追う
駅員さん、無線連絡
サラリーマン、鞄投げ
OLさん、道ふさぐ
「フォーメーション・ブラボー!」
「「「ハッカペリッタ!!」」」
大学のラグビー部っぽい人たち
何食ったら首と肩、そんなすごくなんの?
しかし今日の”逃げ恥” 男は運が良かった
全部をすり抜け、かわす
超絶、お逃げモード
誰もが(もう無理か)と思った刹那
またやってしまった
「駿馬俊足 2割増し!」
俺は気づいたら
その男とぴったり並走していた
しかしちょっと待て……冤罪っかな
1%くらいはあるんじゃないかな?
もしかしたら会社内の派閥抗争とか
国家権力にちょいちょい歯向かったとか
そういう昼ドラみたいな事情の
真っ最中かもしれない、違うかもしれない
いやっ……もっとシンプルに考えてみよう
今この瞬間俺はこの人を裁けるのか? という問い
さらに言ってしまうと俺そんな人様だったっけ?
違う、たぶん違う
でもこれだけは言いたい!
君に言いたいんだ!
「車両の入口付近カメラは二台以上ありますよ
あとカメラは広角・高画素だからくっきりキレイに映えてます!
しつこくてごめんなさい、もし本当だったとしてですよ
そんなリスク高めなことなんでやるの?
明日、AIに検知されて検挙ジャンね
長々とありがとうございましたです!」
俺はそれだけ言って走るのをやめた
男は一瞬、変な顔をして
そのまま逃げていった
(Good Luck……ほぼ痴漢かもしれない君たちへ)
俺は右手を上げて見送った
そして豪快に盛大に遅刻した
後日ニュースで痴漢事件の続報が流れた
逃げたサラリーマンが自首したらしい
取り調べでこう語ったそうだ
「逃げてください、その方がドラマになるからって
あいつ言うんです悔しくて悔しくて
でも冷静に考えたらあいつの言う通りだなって
そう思って来ましたすみません」
「兄ちゃんよ
それカツ丼食ってから言いなよ……っな」
今日も物語は始まらなかった
たぶん一生知ることはない
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