不断野(明)は地獄とからまない
天解 靖(あまかい やす)
それ、たぶんやらずに良かった件
第1話 縮まらないあいつとの距離
朝の駅前は今日も人が多すぎる
通勤ラッシュというより、もはや物理攻撃だ
流れの向こうに、秀平がいた
同じクラスで同じ方向に通っているはずなのに
なぜか毎朝ちょっとだけ先にいる男
「秀……平っ」
思わず声が漏れたが距離がある
手を振るには遠すぎるし叫ぶのは論外だ
仕方なくSNSを開いてメッセージを送るが既読はつかない
どうせ通学中も勉強しているのだろうな……あいつはそういうやつだ
その瞬間、胸の奥でよく分からない情念が発火した
別にあいつはライバルでもないし、なんでもない
ただ今日は学校に着くまでに「おはよう」を言いたい
そんな気分なんだ
本気なんだかんだ
早歩きするも人にぶつかる
「すませ……ん」
(大人の皆さん ワザとじゃないですよね たぶん)
そしてまた人に阻まれる
走る……まるで通勤中の大人たちが壁みたいだな
「しまうまった!」
感心していたら秀平が視界から消えた
校門まで残り0.0179986リーグ
ここはひとつやるっきゃない
「迷彩魔法発動……からのバイオミメティクス(生物模倣技術)」
(そうなんだよ……後々考えればこれが今日の誤選択)
「駿馬俊足!」
世界が一気にスキップした
足が地面を蹴った感覚だけが残る
次の瞬間 校内にいた
「あっ、ヤベっ」
気づけば完全に彼を追い越していた
背後から声がする……当然だ
「よお、お前さぁ遠くからなんで俺の後ろついてきてたの?」
振り返ると、走り寄ってきた秀平がいた
普通に、爽やかに、おはようの顔で
「いや、気づいてたんなら振り返って
ハンドジェスチャーしろよ!」
思わず逆ギレ口がついて出た
秀平は一瞬だけ考えて、肩をすくめる
「だなダナキャランだな」
意味は……ない語感だけだ
たぶん秀平も分かってない
朝のチャイムが鳴る
今日も何の成果もなかった
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