第2話 今起きている異変 ~壱~

 一班が現地に到着した。

ただ、そこには何もない。

日本全国、

どこででも見られる山中の風景が広がっていた。


「……リーダー、

計測器の針はこの辺りで振れ出します。

次元の歪みはこの辺りで間違いありません」


 ミズノをリーダーと呼んだ小柄な青年は、

スピードガンのような機械を両手で持ち、

ゆっくり振り回しながら報告した。


「リーダー!

こっちに車があります!」


 背の高い青年はミズノに駆け寄り、

そう言う。


「何?

全員、車へ向かう」

「こっちです」


 ミズノの号令に従い、

一班は背の高い青年の後をついていく。


「ヒロセ、車の周囲は?」

「……それが、おかしことに誰もいません。

詳しくは現場を見てもらえればと」


 ミズノは背の高い青年をヒロセと呼んだ。

ヒロセは一班をつれて問題の車に到着した。


「……これは」


 ミズノが言葉を失う。

車はバンで、後部座席のドアが左右とも全開だった。

 だが、

そのドアにはべたべたにダクトテープが張り付いている。

車内を見ると、

隙間と言う隙間がダクトテープで目張りされている。


「……車内には燃え尽きた練炭が、複数。

キーは運転席に挿したままだ。

自殺か?」

「一人じゃないみたいです」


 女性隊員が、

車内で数枚の封筒を発見した。

それらには、

全て違う筆跡で『遺書』と書かれている。


「じゃ、ご遺体は?」


 小太りの隊員がそう言いながら周囲を見回す。

彼の言う通り、車内にも周囲にも遺体は見当たらない。

遺体が獣に食い散らかされたとしても、

血痕すらない。


「リーダー、これを」


 呼ばれたミズノが振り返ると、

ヒロセは地面に屈んでいた。

ミズノはそれに駆け寄って、となりに屈む。


「足跡です。

……まだ新しい。

スニーカーですね。

サイズは27くらい。

男性ものかと」

「……よく見ると、

近くに足跡が複数あるな」


 ミズノの言う通り、

足跡が複数、しかも全て同じ方向を向いていた。


「自殺未遂、ですかね」

「練炭はどれも燃え尽きて、

既に冷たくなっていた。

しかし、

この足跡はかなりしっかりした足取りで歩いている。

しかも、足跡は車と逆方向へ向いている。

どう考えてもおかしい。

 サワダ、

二班に連絡して周囲の監視カメラをありったけ探せ。

足跡は西へ向かっている。

この山の西側のカメラを重点的に、

このバンか乗っていた人が写ってないか調べろ。

シマザキ、サワダを手伝え」


 ミズノは小柄な青年をサワダ、

小太りの隊員をシマザキと呼んで指示を出した。


「ヒロセ、セキグチと近くの警察を呼んで現場検証を。

今の現場の写真撮影も頼みたい。

 キャップ、

現場に異世界人の姿はありません。

ただ、車があり、中はもぬけの殻でした。

 ヤツら……」

「異世界人が車に乗っていた人を襲って、

その身体を乗っ取った可能性がありますね」


 無線機越しにミズノはキャップに報告した。

キャップは冷静に指示を飛ばす。


「二班に周囲の包囲を継続するよう指示します。

一班はミズノ君の指示通りに。

ミズノ君は現場を警察に引き渡したら、

一度基地に戻ってきてください」

「了解。

 あ、セキグチ。

ヒロセだけで人手が足りないなら、

二班から何人か回してもらってくれ。

 ヒロセ、お前の足で稼ぐ捜査スタイルを否定はしないが、

いかんせん時間がかかる。

今は急いでるんだ。

二班の情報も活用してくれ」


 セキグチと呼ばれた女性隊員がミズノに敬礼をして立ち去る。


「ハマダに色々頼みながら走り回ります」


 ヒロセはミズノにそう言って、笑って去っていった。

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