第6話

夕暮れ。2人の影が伸びる。


「よっ、ほっ。届くかな?じゃーんぷ!いえい!」

鈴は、石畳の端にある細い石の段を、ヒョイヒョイと進んでいる。

あんなに異質だった姿はなく、こうしているとどこにでもいる無邪気な子供だ。


「届くかな?ここは届かない!!・・・よっ、うーんこの距離は無理か・・・。」

「鈴ちゃん、縁石の上をそんな風に歩くと危ないよ?」

栞は完全に鈴に根負けして、天羽さんを鈴ちゃんと呼ぶ。

あのあと何度も何度も、天羽さんと呼ぶたびに、訂正された結果だ。


「すごーい!この石の名前ってエンセキって呼ぶんだ!ふんふん、縁の石。じゃああんまり踏んじゃかわいそうだね。ごめんね、エンセキさん。」

いや、どこにでもいない。本当に優しい子だ。そう思った栞に鈴は切り出す。


「ねえ」

「ん?なあに?鈴ちゃん」


言い淀む鈴と、鈴ちゃんの言葉を待つ栞。


縁石を撫でながら、鈴は聞いた。「・・・わたしのこと、こわい?」


「!!」

どきりとした。栞の周りの風がザワザワする。


「こわいよね・・・。神さまなんて言われて、変な力使って。ごめん、そんな子にお婿さんになってなんて言われても、困るよね・・・」


「・・・あっ。」

そんなことない、本当はそう言いたい。いや、言うべきだ。

しかし、この子の目を見ていると、なぜか嘘がつけなくなる。


「そんな・・・そん・・・な・・・こと・・・。」

栞の声が詰まる。栞はまるで喉の奥まで異物を突っ込まれているような感覚に襲われた。

周りの風の音が、激しくガサガサと揺れる。

「ううん、いいの。本当のことだもの。」


瞬間。

大きな風が吹いた。

「・・・そんなこ・・・そんなことないっ!!ないんだ!!!・・・ないよ・・・。」

「・・・っ!?・・・。」

驚きの表情を浮かべる鈴。言えるはずない、神さまになってしまったわたしの前でそう答えられる人は1人もいないはずなのに、どうしてこの人はわたしのためにこれが言えるのだろう。

もちろんこんな嘘、誰だって言える。

しかし、神さまの前では嘘はつけない。はずだった。言えるはずのない言葉だった。


「栞くん・・・やっぱり、わたしが愛してるのが栞くんで良かった・・・。」

栞は、自分でも気付かないうちにボロボロと涙を流していた。

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