水王-2
テオドロスは机に座って、手鏡を見ながら悩んでいた。どうも最近、たてがみの抜ける量が増えている気がする。家で妻に「あなた、たてがみの量が減ってない?」と言われるのが辛い。テオドロスが唸っていると、ドアを叩いて副長のレオが部屋に入ってきた。レオはそんなテオドロスの様子を見て言う。
「どうしたんですが?隊長。手鏡なんか見て」
テオドロスは慌てて引き出しに手鏡を隠しながら、レオに尋ねる。
「なんだ、突然。何か用か?」
レオが答える。
「ええ、ミレリア様についてなんですが……」
たてがみを脅かす元凶の話題が出た。
「あの方、とても筋がよろしいですね……」
テオドロスとすれば「スパルタ方式で絞れば、すぐに音を上げるだろう」という作戦であった。しかしミレリアはそれを難なくこなした。
それどころか訓練を機にして、他の隊員との交流を図り、不死隊の一員としてすでに溶け込みつつある。特に魔術部隊の隊員との間柄は、すでに教える立場が逆転している。魔術の創始者と言ってもよいミレリアの、その根本的な知識量は莫大であった。戦闘の作法を覚えれば、後はその基礎の応用という形で、戦闘魔術師としてはすでに並ぶものが居ない。
テオドロスは、ミレリアという女を甘く見ていたのだ。
(俺は……間違ったというのか……)
テオドロスは頭を抱えていた。このままでは「次の戦場に出せ」と言ってくるに決まっている。レオはテオドロスを見て、まあまあと言う感じで言う。
「もう、いいんじゃないでしょうか?ミレリア様の技量であれば、後衛の魔術師としては申し分ありませんし」
テオドロスはレオを睨みつける。
「何かあったら責任を取るのは俺だぞ!他人事だと思って、どいつもこいつも適当なことを言いやがって!」
レオはスミマセン、と言う感じで頬をポリポリと掻きながら言う。
「しかし……なんであれほど自ら戦場に出たがるんでしょうかね?」
コンコン、とドアを叩く音がする。テオドロスが返事をすると、紙を持ったミレリアが部屋に入ってきた。噂をすれば、と言うやつである。ミレリアが出会い頭に言う。
「テオドロス、相談があるんだけど」
テオドロスが答える。何としてもここで阻止しなければならない。
「戦場に出たいとおっしゃいますか。しかし、ですね。ミレリア様はまだ基礎を学んだだけの段階。やはり戦場に出るためには独自の応用力も必要ですな」
レオは(新兵に言ってるのと逆のこと、言ってませんか)と言いたげな顔でテオドロスを見つめる。
ミレリアは言い得て妙、と言う感じで答える。
「そうそう、それについてなんだけど。こういったのを考えたから、相談してみようと思って」
そういって持っていた紙を机に広げ始めた。
(ちくしょう……俺は……また間違えたというのか……)
テオドロスは自分を殴りたい気持ちを抑えつつ、ミレリアの説明を聞き始めた。
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