千年公ミレリア
ikhisa
紀元0〜200年
百年寵姫-1
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
閨の間を恐怖に満ちた悲鳴が引き裂いた。
ベットの上で震える、まだあどけなさが残る少女の顔は恐怖でひきつっている。黒く長い髪の毛の間から見開いた眼で、自分見下ろす二回りほど年上の男性を見上げている。
彼女は以前、複数の男どもに一晩中慰み者とされた過去がある。その時の恐怖が今でも心に焼き付いていた。
静かな目で少女を見下ろしている男は皇帝だった。この美しい少女に目を付けて、彼女を手中に収めることとしたのだ。この帝国の最高権力者であり、自分が強者であることを自覚し、弱者から奪うことを当然のものとして疑わない傲慢な男。男は膝をつき、震える少女の目線の高さに自分の目を合わせて言った。
「大丈夫だ。何もしない。だから怖がらなくていい。」
ただ、優しくはあった。
少女は人魚であった。名はミレリアという。宮中に来る前の彼女は公演団に属しており、人気の女優でもあった。恋人もいたが、先ほど述べた通り皇帝の目に留まり、召し上げられて今に至る。
最初は恐怖に怯えていたが、徐々に宮中にも慣れていく。閨も受け入れるようになっていった。
そんな彼女はこの宮中において、決定的ともいえる問題を抱えていた。
「子供が生まれない。」
宮中の医者に昔の事件にことを伝えると、おそらくそれが原因でしょう……と悲しそうにミレリアに伝えた。
子供の生まれない妾が成り上がることは難しい。権力者の継承権に関わることができないからだ。こうなった場合はその女が老いる前に、宮廷から立ち去ることになるのが通例だった。
だがミレリアは不死の人魚である。美貌とその永続性、まさにミレリアは生きた宝石だった。
宝石とは財産だ。そして、優れた宝石は支配者の王冠のように、その地位の継承を意味する。ミレリアもまた、継承された。
「壮麗帝ドルマン」
ミレリアは継承された
「暗帝ルアント」
ミレリアは継承された
「賢帝アルオンニウス」
ミレリアは継承された
「雷帝グランドニウス」
ミレリアは継承された
「共同皇帝アルドリウスとレボロ」
ミレリアは継承された
…………
「100年寵姫」
後にいくつもの二つ名を持つことになるミレリアの、今は忘れられた最古の二つ名。それは屈辱的なものだった。
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