やはり昼休みは答えをくれない

昼休みのチャイムと同時に、校舎全体が一段階うるさくなる。

廊下に溢れ出す足音と友人達との会話。


俺は約束のため学食に向かっていた。


(……来るよな、あいつ)


半ば無理やり誘ったようなものだから来なくても仕方ない。

そんなことを考えながら入口を見ると、すぐに小さな影が目に入った。


「悠真くーん」


手を振っているのは、佐々木祭。

もはや見慣れたジャージ姿だ。いつもその服装だが、校則的には大丈夫なのか……?


「早いな」

「昼は暇って言ったでしょ。授業終わって速攻で来ましたよ!」


学食はいつも通り戦場だった。

列は長く、空いている席はほとんどない。


「何にする?」

「私は日替わり!」


祭は迷いなく列に並ぶ。

俺はその後ろで、きつねうどんの文字を見つめた。


(……ここで何を話すつもりだったっけ)


いろいろ考えていたようなはずなのだが、人の多さと騒音のせいで、全部が少し遠くなる。

ようやくトレイを持って席を確保する。

二人で向かい合うが、周りは騒がしくて、落ち着いて話せる雰囲気じゃない。


「うどん好きだよね、先輩」

「安いからな」

「夢がない……」


昼ご飯に夢を求めてどうするんだよ。


祭は笑う。

いつも通りの軽口。いつも通りの距離。


「……ねえ」

「ん?」


祭が何か言いかけた瞬間……。


後ろの席の男子が勢いよく立ち上がって椅子をひっくり返した

ガタン、と大きな音。


「大丈夫かよ」

「……あはは」


祭は言葉を飲み込んで、日替わり定食に箸を伸ばす。


「さっき、何か言いかけなかったか」

「え? いや、なんでもないです」


そのなんでもないが、昨日からずっと続いている。


(……昼休みは、答えをくれないな)


そう思いながら、俺も黙ってうどんを啜った。

騒がしい学食の中で、二人分の会話だけが、妙に静かだった。

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