第11話 宇宙野盗襲来
ドン・ハルキサワの
先頭のモデルは、もうターンして長い通路を戻ってきている。
最後尾でランウェイするレイラ。頑張って先輩モデルたちについていく。
レイラが最前列で食いつくように見つめているバリルとニーナのちょうど目の前に来たときに。
ドオオオオオオーン!
大きな音がした。爆発音のように聞こえた。
なんだ?
会場がざわつく。これも新手の演出か? いったい何が始まるんだ?
みなが互いの顔を見合わせていると。
「お前ら、動くんじゃねえ、おとなしくしていやがれっ!」
大声とともに、ランウェイ通路の両側から、男たちが飛び出してきた。
「なんだ、あれは?」
「これが今日の趣向なの?」
観衆は、目を丸くする。
飛び出してきた男たち。
いかつい大男ばかりだ。全部で30人ばかり。
その
どう見ても世紀末スタイル。野盗や
会場は、しんと静まり帰った。
あまりの椿事である。華やかなファッションショーの場に全くふさわしくない世紀末タイルの男たちの登場。
なんだこりゃ!?
これが
会場の観衆、混乱する。
「うーん。今年の
「突き抜けすぎじゃない? なんなの、これ。あの野暮ったい男ども。夢の世界がぶち壊しだよ。突き抜けすぎて、何も刺さらないよ」
「そうかな? あえて華やかな世界と真逆の世界をぶつけて、最先端の
「美女と野獣みたいな?」
「野獣? どう見ても美女と
「今年の
一瞬、静まり返った会場がまた、ざわめき始める。
目をぱちくりしているのは、ランウェイ中のモデル、
「こんなの、台本にないぞ!」
「こんな男達、誰が呼んだんだ!」
「騒ぐな!」
世紀末スタイルの男たちの中で、ひときわ大きい男が叫ぶ。手にマイクを持っている。ランウェイ脇の取材陣から奪ったものだ。
「俺たちは天下御免のゴラン団よ。残念ながらこれはショーじゃねえ。ゴラン団のおでまし。そういえば、わかるだろう。宇宙野盗ゴラン団よ。てめーら、命が惜しかったら、有り金残らず出しやがれ! いいか、決して俺たちに逆らうんじゃないぞ」
そういって、大男は、手にした銃を天井に向けて撃つ。
パン、と乾いた音がした。
大男、すぐ隣にいたモデル、レイラの腕をつかみ、銃を突きつける。
「さあ、わかったな。俺様がゴラン団の
キャー、と悲鳴が上がる。
ランウェイ通路の上で。
ゴラン団一味はみな、モデルを掴まえ、銃を突きつけている。
何が起きたのかと最初はキョトンとしていたモデルたちも、ここに至って事態を理解し恐怖に顔を歪め、悲鳴をあげている。ネクリも真っ青になって、ぶるぶると震えていた。
「キャー、誰か助けてー」
華やかなショーの会場は、一転、恐怖の戦慄と、悲鳴が駆け抜ける場に。
ゴラン団。
名高い宇宙野盗である。
風のように現れ、風のように金品を奪い去っていく。世紀末スタイルがトレードマークだった。
よりによって。宇宙最悪の野盗が宇宙最高のショーの
パニックになる観客。
会場の警備員は銃を手に立ち上がるが、
「武器を持っているやつは、今すぐ捨てろ。さもないと、このお嬢ちゃんたちの頭が吹っ飛ぶぞ。見せしめに誰がふっとばしてやろうか?」
レイラの頭に、銃を突きつける。
ゴラン団一味はみな、モデルの頭に銃を突きつけている。百戦錬磨の宇宙野盗だ。手際は心得ている。
「キャー、やめてーっ!」
泣き叫ぶモデルたち。
人質を取られ、警備員たちは、なす術もない。
「さっさと銃を捨てるんだ」
ゴランが、凄みを利かす。
やむなく、警備員たちは銃を床に放っていく。
「そうだ、いいぞ」
ゴランは、ぐるっと会場を見回し、にんまりとする。もはや抵抗できるものは誰もおるまい。
ランウェイ通路の最前列の席で。
すぐ目の前のゴランを唖然として見つめるバリルとニーナ。
「なんと……派手なことをする連中だな」
目をぱちくりさせるバリル。ニーナはすばやく記憶を手繰る。
「ゴラン団、最近、この星域を荒らしまわっている神出鬼没の宇宙野盗ですね。どこからともなく現れる。でも、この人たちうまくいくのは大抵登場までみたいですよ」
「うむ。派手に現れては失敗して逃げていく。確かそういうのが多かったな。今回も失敗してくれるといいのだが」
「警視、これはどうします?」
バリルは、頭を掻く。
「なんとしたものか。確かに、大変な事態……しかし、我々は今公務中じゃないし。まずは様子を見るか。勤務中の警察がなんとかするだろう」
突然目の前で起きた事態に。
警察官2人組もさすがになすすべは無い。
宇宙野盗ゴラン団。
どこからどうやって現れたのかわからないけれど、ともあれ、一時的に大観衆のいるショー会場の占拠に成功したのは間違いない。しかしここから、どうやって金品を奪って逃走するのか? もちろん、すぐさま星系警察に通報がいって、即座に会場周辺に厳重な非常線包囲網が敷かれるのは間違いない。逃げおおせるとは、とても思えない。
半ば呆れているバリルとニーナをよそに。
「ハッハッハ。いいか、これから、部下をお宝回収に下す。財布にアクセサリー、金目の物を全部用意して待っていろ。いいな。抵抗するやつは片っ端から撃ち殺すぞ。ん?」
目が合った。
レイラと。
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