第7話 ショーの始まり




 「さあ、みな様、ご覧ください。宇宙きっての下着メーカー各社がこぞって参加する下着アンダーウェアファッションショーがまもなく始まります。全宇宙の注目の的です!」


 司会MCの絶叫!


 大きな会場いっぱいに華やかな音楽とライトが交錯する。


 シン・トーキョー星下着アンダーウェアコレクション。華麗なショーがいよいよ始まった。

 

 会場の様子。


 モデルたちの控え室でも、大画面のディスプレイで写し出されている。

 


 「すごく広い会場だね、宇宙最大の下着ファッションショー。いつも配信中継で観てたんだけど。いよいよ自分が出るんだ。信じられない。こんな日が来るなんて。ねえ、夢じゃないよね」


 出番を待つ控え室。レイラに話しかけてきたのは、ピンクの髪のネクリ。目を輝かせている。ネクリはピンクの可愛いレースをいっぱいヒラヒラさせた下着アンダーウェア。ピンクの透かしシースルーのケープに腰マントも身に付けている。ピンクの宝石類もキラキラ。ピンクで統一して、目一杯飾り立てている。


 ネクリ、軽く震えている。下着モデル歴1年。初の大舞台。とても落ち着いてはいられない様子。


 「レイラ、あなたって落ち着いてるのね。全然動じてないじゃない? モデルデビューしていきなりのビックショーなのに、もう、なんでそんなに平然としていられるの?」


 「え?」


 と、レイラ。


 「そんな、全然。平然となんてしていないよ」


 きりっとした顔立ちに、幼さを見せた。実際にガタガタだった。とても動悸が収まる状況ではない。しかし刑事として修練を積んできたのである。内心の動揺を、顔に出さないくらいのことはできる。


 でも今は。新人モデルを演じるんだ。多少動揺する様子を見せた方がいいのかも。レイラの頭もかなり混乱している。


 「私、いきなり大舞台を踏ませてもらうことになって……もう何が何だかわからなくて。何も考えることもできない……何も見えない。それで固まっちゃってるの。自信なんてないよ。ネクリ、あなたは経験積んでるんだから、その分、あれこれ見えてるんじゃないの?」


 「まさか!」


 と、ネクリ。ピンクの髪を、ふわりとさせる。


 「私だって、デビューしてまだ1年。言ったでしょ。コツコツといろいろ仕事してきて、今日が最初の大舞台なのよ。今までの仕事とは全然違う! チャンスが来たら絶対ものにしてやらなきゃってずっと思ってたんだけど。いざとなるとなんだか脳が蒸発しちゃって。もうダメ! どうとでもなれ! そんな気分」


 そういうものか。


 そうだろうな。


 レイラは、周囲を注意深く観察する。控え室に詰めた出番待ちの下着モデルたち。10代少女、20歳そこそこの若い子が殆どだ。大舞台を前に、華やかな最先端の下着姿で。期待と不安、高揚と動悸が入り交じり共鳴し合っている。控室の熱気、尋常でない。


 キラキラのネクリも。確かに沸騰状態に見える。湧き上がる夢と憧れでいっぱいに。


 「ネクリ、すっごく素敵だよ。その下着アンダーウェア、プリンセスのドレスみたいだね」


 「えー、もう」


 ネクリは、頬をピンク色に染める。


 「私は背が低いから、いろいろ散々着飾って飾って最大限盛って盛らないとダメなのよ。プリンセス? 違うって。この下着アンダーウェアのコンセプトは、〝おもちゃ箱の中の人形ドール〟だから。私って、いろいろなものに取り囲まれて、やっと自分が出せるの。素の自分で勝負できるレイラが、本当にうらやましい」


 

 ぐふ、



 「そ、そう」


 レイラは、またさらにドキュンと。


 素で勝負……


 いや、本当の素顔を見せたら、絶対だめなんだけど。何しろ潜入捜査だし。


 素の自分、刑事の正体は隠す。たとえ限界ギリギリまで肌露出したとしても。私に、デビューしたての新人モデルらしくできてるかな。モデルの仕事のドキドキと潜入捜査の刑事の自分で、なんだかごちゃごちゃになっている。


 レイラは、つとめて冷静に周囲と自分を見比べる。


 心配することはない。うまく溶け込んでいると思う。憧れの世界で、ワクワクドキドキでいっぱいの女の子。うまく演じている。いや、実際動揺しまくってるから、演技じゃないけど。同僚モデルたちは、自分のことを、デビューしていきなり大舞台を踏めるチャンスをもらった幸運ラッキーガール、そう見ている。誰もレイラの正体を疑っていない。刑事に見えるわけがない。


 まず、新人モデルとしてしっかり成功して、それを捜査につなげる。


 それでいい。


 会場では、モデルたちのランウェイが始まっている。

 

 歓声も大きく上がっている。


 レイラの出番も迫っていた。

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