第8話 下着モデルの尻尾
シン・トーキョー星コレクション。新作
派手な音楽が響いている。
宇宙で名を知られた大手下着メーカーが競って開発した最新最先端の下着を纏うモデルたちが、次々とランウェイしていく。
「うーむ。今回も凄いの。やっぱりこれを見ねばいかん。今日は妙な事件が起きなくてよかった。全く警察ってのは、いつ呼び出しくらうかわからんからな。警察というのは、因果な職業だ。たまには平和に楽しみたいものだ」
広いランウェイの通路の最前列かぶりつきの席。そこでランウェイするモデルにかぶりつきそうに身を乗り出していたのは、宇宙警察の星域本部長バリル警視であった。
星域本部長は、幾つかの星系を管轄する宇宙警察のトップである。かなりの要職であるが、ストレスも多い。
上の政治家警察上層部の無茶な命令と下の現場の突き上げに挟まれて、毎日てんてこまい汗だくのバリルにとって、
「やっぱり最前列の席は良いですね。今日はしっかり最先端の
星域警察本部長バリルの隣に座っているのは、秘書のニーナ。こちらも食い入るようにランウェイするモデルを見つめている。優秀な警察官であるが、お洒落だファッションだに目がない。
バリルが新作ファッションショーに行くという話を聞きつけると、自分も行く行くと言ってついてきたのである。星域本部長の身辺警護する準公務だと言い張って、チケット代は、公費で落としていた。ちゃっかり屋の女性警察官であった。
目の前を、優雅で華麗な
最前列の席で、負けず劣らず、食いつきそうに身を乗り出す警察官2人組。周囲の人には、誰も警察官だとは気づかれない。
◇
「さあ、いよいよ次は、ドン・ハルキサワの新作コレクションです!」
会場にどよめきが起きる。今日、最大のどよめきだ。会場の中だけでない。ショーが配信中継されている宇宙のすべての場所で、どよめき歓声が上がった。
ドン・ハルキサワ。下着ファッション界の超大物デザイナーだ。影響力は絶大。
ドン・ハルキサワの新作ステージ。間違いなくショーの山場、ハイライトだ。
「来ますよ。ドン・ハルキサワの新作!」
観客席のニーナも興奮している。
「う、うん」
バリルは、すでに過呼吸気味。警察要職の雑務のあれこれのことは、もう完全に頭からとんでいた。
会場の音楽と
「みなさま、さあ、ご覧ください。ドン・ハルキサワの新作です。毎回ドン・ハルキサワ新作発表ではショーの配信同時視聴接続数が過去最高を更新し続けています! 今年はどうなるでしょうか? 我らが下着ファッションの帝王ドン・ハルキサワの新作! 今日も宇宙中の女性の心をしっかり掴んで離さないことは間違いません! みなさまの目の前に、宇宙最高の
ドン・ハルキサワ事務所のモデルたちがランウェイを始めた。
どよめき、歓声、さらに大きく。もう絶叫と言ってよく。
「バリル警視、あれって!」
秘書ニーナの悲鳴に近い叫び。かわいいメガネの下の目を大きく見開いている。
「う……む。あれは、なんだ?」
バリルも、目を白黒。
華麗な、ドン・ハルキサワ新作下着コレクションのモデルたち。
色とりどり鮮やかで様々なタイプの下着。
だが、全てに共通する
全員、お尻に
「
「ご覧ください!
ドン・ハルキサワ新作コレクションのモデルたち。
「なんだって! 今年のドン・ハルキサワの
「これが宇宙の最先端か!」
「すごい!」
「斬新だ!」
誰もが予想していなかった不意打ちの衝撃で、会場の熱気は一気に高まる。どんどん大きくなっていく。今年の
ドン・ハルキサワの新作下着コレクション、大手メーカー各社が参加しているので、モデルは大勢登場する。華やかな
その最後尾に。
レイラがいた。白のシンプルなブラジャーとショーツ。お尻には、ペルシャ猫風の長い尻尾をピンと立てて。
緊張の一瞬。
めくるめく大会場へ向けて。
ランウェイスタート!
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