第18話

アーキタイプとの対話中、世界が激しく揺れた。現実世界の「後継企業」が、レンの手によって独立したサーバーを物理的に破壊し、全てのデータを自社サーバーへ強制吸収しようとする『全データ・サルベージ』を開始したのだ。



「強制吸収……!? そんなことをしたら、サーバー間の矛盾で、住人たちの魂(データ)がバラバラになって消滅してしまいます!」



リリィの絶叫と共に、空がガラスのように割れ、巨大な「吸引の渦」が現れた。 それはレベル1兆倍でも、管理権限でも抗えない、物理的な「消去」の力。



「バルト! リリィ! 全住人を『プロトタイプ』へ誘導しろ! ここだけは、外の世界と切り離された独立階層だ!」



「しかし師匠! 師匠はどうするんですか!?」



レンは、世界中から集まってきたログインボーナスの「光の粒」を、自らの箒に集約させていた。 「俺は、この吸引の渦そのものを『掃除』してくる。……入り口のゴミを片付けなきゃ、誰も中に入れないだろ?」



レンは、レベル0の特権である「座標の超越」を発動。 全プレイヤーが絶望し、消えゆく世界の中で、ただ一人、逆流する吸引の渦へと向かって飛び上がった。




吸引の渦の内部は、数億、数兆のデータが混濁する地獄だった。 現実世界のスーパーコンピュータが、この世界のすべてを「ただの数字」に還元しようとする圧力。



「……重いな。だが、前世の廃課金レイドよりはマシだ」



レンは、かつて自分がスタックさせた「経験値1兆倍」の記憶を、今度は「防御力」ではなく「存在の重み」に変換した。 消されようとしても消えない、上書きしようとしても書き換わらない、絶対的な「個」の意志。



「ログインボーナス……『永劫不変の日常』を適用!」



レンが箒を横一文字に振ると、渦巻くデータが秩序を取り戻し、一瞬で「ただの穏やかな風」へと変わった。 彼はデータの奔流の中に手を伸ばし、現実世界で自分を消そうとしているシステムの「根源」に触れる。



「あんたたちは、この世界を『商品』だと思ってる。……だが、俺たちにとっては、ここで過ごした時間は『本物』なんだよ」



レンの指先から、バグを修正する「清浄な波動」が現実世界のサーバーネットワークへと逆流する。 それは攻撃ではない。システムの脆弱性を埋め、これ以上の干渉を不可能にする「完全なセキュリティ」の上書き。 レンは自分自身の存在を「世界の結界」に変えることで、エターナル・レジェンドを永遠に守る盾となった。

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