第14話
レンがラボを脱出した時、そこは雲を貫く巨大な本社ビル『エターナル・タワー』の最上階だった。 ビル全体に警戒アラートが鳴り響き、武装したサイボーグ警備員たちがレンを包囲する。
「対象を排除せよ! 物理攻撃、電磁パルス、すべてを許可する!」
放たれるレーザー、飛び交うマイクロミサイル。 だが、レンはそれらを避けることすらしない。彼はただ、手にした竹箒で「空間を掃く」ような動作を繰り返すだけだ。
「……ノイズがひどいな。こっちの世界の兵器は、無駄なエフェクトが多すぎる」
レンが箒を一閃すると、飛来するミサイルが空中で「花びら」に変わった。 彼が仮想世界で極めた「因果律崩壊」は、現実世界では「物質の再定義(ハッキング)」として発現していた。
「なんだと!? 攻撃が……変換されただと!?」
警備員たちが驚愕する中、レンは悠然とエレベーターホールへ歩みを進める。 「俺がいたあの世界は、あんたたちにとっては金儲けの道具だったかもしれない。だが、そこには友達も、守るべき日常もあった。それを『デバッグ』の一言で消そうとした罪は、相応の掃除で清算してもらう」
レンはビルの構造データを脳内で読み取る。 「ログインボーナス……『フロアの一括削除』」
レンが床を箒で叩くと、武装集団が立っていた床だけが、あたかもCGが消えるように消失し、彼らは一階のロビーまで一気に落下していった。殺しはしない。ただ「ゴミ」として、適切な場所に移動させただけだ。
最下層で待つ会長の元へ。レンの「逆襲の清掃」が加速する。
タワーの最下層。そこには、この世界の全てを支配していると豪語する男、エターナル・コーポレーション会長の金城がいた。 彼は狂気的な笑みを浮かべ、巨大なメインフレームの前に立っていた。
「素晴らしい……! 仮想世界の力を現実に持ち出すとは! 蓮見くん、君こそが人類の次のステージへの鍵だ!」
「鍵じゃなくて、掃除係だよ。……金城、あんたがやっていることは、ただの『汚染』だ」
金城は叫ぶ。 「汚染だと!? 私は人類を肉体という不自由な檻から解放し、不老不死のデジタル・ゴッドにしようとしているのだ! 私の意志こそが、世界の新しいアップデートだ!」
金城がスイッチを押すと、彼自身の意識がサーバーにアップロードされ、タワー全体が巨大な「鋼鉄の怪物」へと変貌し始めた。ビルそのものがレンを握りつぶそうと蠢く。
だが、レンは動じない。 「……アップデートってのは、バグを直すためにあるもんだ。あんた自身が最大のバグなら、俺がやることは一つだ」
レンは箒を両手で握り、静かに目を閉じた。 仮想世界の弟子バルトの剣筋、女神リリィの祈り、そして自分が守ってきたあの広場の静寂。 そのすべてを、この一撃に込める。
「全サーバー、全物理階層のログインボーナスを同期……。……最終奥義、『世界清浄(ワールド・クリーンアップ)』」
レンの箒から放たれたのは、絶対的な「無」の波動だった。 それは破壊ではなく、すべてを「あるべき姿」に戻す力。 金城の狂気も、タワーの異変も、無理やり歪められた物理法則も、すべてが本来の清らかな形へとリセットされていく。
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