第10話

機甲世界の先遣艦隊を一振りで消し去ったレン。そのニュースは、全サーバー共通の「掲示板」を瞬く間に駆け巡った。



『未開サーバーに、最強の隠しボスがいるぞ』 『いや、あれはプレイヤーだ。レベル1のくせに管理権限を叩いてやがる』



そんな書き込みに突き動かされた「本物の化物」たちが、この世界に集まり始める。 その筆頭が、全サーバー統合ランキング1位の男、剣聖ゼノンだった。



「お前が、この世界の『掃除係』か」



広場に降り立ったゼノンは、一歩歩くごとに周囲の建物をその威圧感(プレッシャー)だけで粉砕していく。彼のレベルは5000。もはやプログラムの制約を超え、存在自体が不滅に近い。



「ここは俺が掃き清めた場所だ。土足で上がるなら、相応のペナルティを払ってもらうぞ」



レンは一歩も引かない。レベル1という数字は、もはやレンにとって「意味を持たない」ものになっていた。



「面白い。レベル1のゴミが、俺に説教か。死ね」



ゼノンの抜剣。それは時間の概念さえも斬り裂く、超光速の一撃。 だが、レンは動かない。 彼が見ているのは、ゼノンの剣筋ではない。ゼノンの「接続情報(パケット)」だ。



「ログインボーナス……『パケット遅延(ラグ)』の付与」



レンが指を鳴らした瞬間、ゼノンの必殺の一撃が、レンの首筋の数センチ前でピタリと止まった。 「……!? なんだ、体が……動かん!?」



「あんたのレベルは高い。だが、通信速度(レスポンス)は俺の方が上だ。管理権限を持つ俺の前で剣を振るうなら、まずはサーバー利用規約を読み直してくるんだな」



レンは動けないゼノンの額を、パチンと指で弾いた。 それだけで、ゼノンの高レベルな肉体は弾き飛ばされ、街の防壁を三つ突き破って荒野まで転がっていった。




あまりの強さに、レンの元には世界中の「変わり者」たちが集まり始めた。 他サーバーからやってきた落ちこぼれプレイヤー、魔王軍の生き残り、そしてレンの弟子を自称する騎士バルト。



「レン様! このままでは他サーバーの連中に街が滅ぼされます。我々もギルドを作り、対抗すべきです!」



リリィに押し切られる形で、レンは渋々、世界初(?)の清掃ギルド『クリーンアップ』を結成する。 活動内容は「世界のバグ取り」と「外敵の掃除」。



「いいか、俺たちの仕事は戦いじゃない。あくまで掃除だ。敵が来たら、それを『汚れ』と見なして排除する。わかったか?」



レンの指導は苛烈だった。 他サーバーの勇者がレベル上げをする中、レンはギルドメンバーに「ログインボーナスの多重スタック理論」と「物理演算のバグを利用した高速移動」を叩き込む。



「師匠! スライムを100万回連続で空振りしたら、経験値がカンストしました!」 「よし、次はそのまま重力値をマイナスに固定して、飛行の裏技を覚えろ」



バルトたちは、レンの教えによって、レベルという概念を無視した「バグの使い手」へと変貌していく。 そして、ついに全サーバーを統括する「中央評議会」が、レンのギルドを『世界を滅ぼす不正集団』と認定し、総攻撃を決定した。

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