第一章 まさかの異世界召喚④

「部屋を用意してある。

まずは休むといい。話の続きは、また明日にでも」


蓮が柔らかく微笑む。

その瞬間、千夏が元気よく手を挙げた。


「はいっ! 月景さんと同じ部屋でお願いしますっ!」

「お願いするな!? 見ろ、月景さん完全に困ってるから!」


「情熱的なお誘いも素敵だけどね。……ほら、月景が困ってるよ」

蓮の艶っぽい笑みに、月景は小さく咳払いした。


「……巫女殿の身の安全が最優先だ。軽率な同室は許可できない」


案内されながら廊下を歩く。

蠟燭の炎がゆらめき、外は漆黒の闇。


あー……本当に来ちゃったんだな、異世界。


「巫女殿、疲れてはいないかい?」

真横から蓮がしれっと肩を支える。距離感がおかしい。


「あ、大丈夫です! そういうのいいんで!」

「つれないね。仲良くしたいだけなのに」

「はいはい。チームとしてよろしくお願いします!」


後ろではリトが大あくび。

「はぁー、面倒くせー。チャチャッと封印して終わらせようぜ」

「召喚した側がそれ言う!?」

「仕事だから最低限はやるって」

「給料分しか働かないタイプか!!」


さらに後方で、眼鏡がクイッ。

「……巫女殿はツッコミ担当ですね。観察していて飽きません」

「分析すな!」


そして千夏はというと――。


「月景さん! 今度お家に遊びに行ってもいいですか!?」

「……来ても面白いものはありません」

「そんな、月景さんの家=聖地ですよ!? 漁ったりしませんから!」


漁る気満々の顔で鼻息を荒くする千夏。

リトがドン引きし、月景は深いため息を吐いた。


(ごめん月景さん……強く生きて)


夜。

布団に倒れ込み、ようやく一息つく。


隣では千夏が枕を抱えて転げ回っていた。

「ふふふ……リアル月景さんの照れ顔、尊すぎる……」

「照れじゃない。あれは困惑だよ」


……ああ…嫌な予感しかしない。

でも、ここまで来た以上、帰る方法を探すしかない。


千夏が一緒なら、まだ笑える。

――笑えるうちに、動かなきゃ。


目を閉じた、そのとき。

手のひらが、熱を持った。


じわり、じわり。

皮膚の奥で何かが脈打つ。


「……っ、なに、これ……」


闇の向こうで、風鈴が一つ、鳴った。


私の“巫女生活”は――たぶん、もう始まっている。

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