第一章 まさかの異世界召喚③

お偉い方々がずらりと並ぶ中、部屋着のまま説明を受ける私と千夏。

……うん、そんなに見ないで。恥ずかしいから!


要約すると、京に怨霊が増えて困っているらしい。

封印の綻びが目に見えて出始めている、と。


その封印を担うのが“龍神の巫女”。――つまり私。


一方の千夏は、お偉いさんの話なんて聞いちゃいない。

目線は月景ロックオン。瞬きすら惜しむ勢いだ。


「千夏、チュートリアル説明はちゃんと聞けって」

「大丈夫大丈夫。このゲーム何周したと思ってんの? 台詞まで言えるし」

「なら千夏が巫女でいいじゃん!」

「でもチェンジ不可だったんだもん!」


思わず叫ぶと、正面からくすりと笑う声がした。


「ではこの後の説明は、我ら四神と巫女殿、それからご友人に任せよう」


白虎の加護者――藤原蓮。

フェロモンを撒き散らすみたいな微笑みを浮かべて言う。


四神が順に自己紹介を始めた。


「青龍の加護を受ける、萩森月景。……よろしく頼む」

真面目系・無口枠。


「次は私。白虎の加護を受ける藤原蓮。何でも頼ってくれて構わないよ」

笑顔が距離感バグってる枠。


「俺は朱雀の加護を受けてるリト。……まあ、仕事だから護衛してやるよ」

やる気ゼロの兄貴枠。


「僕は玄武の加護を受けている中臣道真。よろしくお願いします」

定番の知性派枠。眼鏡をクイッ。


……乙女ゲームの自己紹介イベント、そのまんま。


「えーっと、要は封印すればいいんですね? でもそんな力ないけど」

「修行してレベル上げるんだよ!」

当然のように千夏が口を挟む。


「怨霊も強くなるから頑張らないと負けるよ?」

「……負けたら?」

「ゲームならリセットできるけど、この世界は……デッド?」

「やめろ!! 巫女交代!!」


「大丈夫だって! 所詮は乙女ゲー……あ」

「なにその“あ”!?」

「ラスボス戦、強すぎて何回か死んだわ」

「乙女ゲーとは!?!?」


……そんな騒ぎを、四神たちは静かに見守っていた。


「乙女ゲームとは?」と眼鏡が真顔で呟いたが、

聞こえなかったことにした。

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