第一章 まさかの異世界召喚②

目を開けると、目の前には雅な屋敷があった。

朱塗りの柱、涼やかな池、風鈴の音。

平安京を思わせる景色が、現実みたいな質感で広がっている。


(ごめん、ゲーム設定そこまで詳しくない。雰囲気で察するしかない)


そして――ずらりと並ぶ和装の公家たち。

……なのに私たちは「部屋着+ポテチ片手」。


そりゃ「え? 巫女? ……え?」って顔にもなる。


その前に立つ、四人の男。

並びだけで分かる。

攻略対象キャラ、勢ぞろいだ。


問題は――なぜ、彼らが私に跪いているのか、だ。


「龍神の巫女よ。我らと共に京を救ってくれ」


荘厳な声。

萩森月景が私の前で片膝をついた瞬間、空気がピシリと張り詰めた。


息が詰まる。

“ゲームのイベント”

のはずなのに、これは現実だと体が理解してしまう。


「……え? 私?」


私だよ? 

モブ中のモブ、栗崎美都。

モブっていうかエキストラB。

「通行人その3」でさえ怪しい存在なんですけど!?


「間違えてませんか!? 

そこの“黙ってれば美少女”が正ヒロインでしょ!?」


横の千夏は、鼻血寸前で月景をガン見していた。


「ほわぁぁ! リアル月景さん! これが噂の2・5次元……!」


「聞いて!? 千夏、あんたが巫女じゃないの!?」

「違う違う、私は“月景さんの嫁候補”! 巫女? そんなのどうでもいい!」

「おかしいって!! ヒロインの自覚どこいった!?」


月景はそんな騒ぎも気にせず、真顔で私の手を取った。

月光みたいに静かな瞳が、まっすぐ私を射抜く。


「間違いではない。君が龍神の巫女だ。

突然呼ばれて戸惑うのも当然だろう。

だが、俺たちが必ず守る。――だから力を貸してほしい」


……いやいやいや。なんでそんな決め顔!?

強制イベントか何かですか!?


「み、美都ズルいー! その手、私とチェンジ!!」

「変われるなら変わりたい! これ完全に誤召喚でしょ!?」

「月景さんに傅かれるなら、私がヒロインするー!!」


――が、申し出はあっさり却下。

結果、私が「巫女」。千夏が「サポート」。


……納得いかない。

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