え?モブの私が乙女ゲーム召喚?ヒロイン役は無理!

白玉蓮

第一章 まさかの異世界召喚①

龍神の巫女。

――京の危機に現れ、混沌を救う存在。

そして彼女を守る、四人の加護者たち。


……そんな設定の乙女ゲームがある。

『巫女と四神の物語』。


「見て見て! このスチル! 月景さんの横顔、国宝級でしょ!!」


鼻息荒くゲーム機を突き出してくるのは、私の幼なじみ・近藤千夏。

黙っていれば清楚系美少女。

――けれど口を開けば、二次元オタクの化身だ。


しかも彼女、三次元男子には塩対応。

アタックしては散っていった男子が何人いることか。

あれはもう、ひとつの戦場だった。


「千夏さぁ……“二次元から人生やり直してこい”は無理でしょ?」

「え? 三次元なんてノイズでしかないでしょ。優しさ配布予定もないし」

「配布って言うな」


私、栗崎美都。十八歳。

千夏とはお隣同士、十八年の腐れ縁。


成績も容姿もごく普通。

ゲームで言うなら完全にモブ。

セリフなしで退場する「通行人A」レベルだ。


でもまあ、それでいい。

千夏が隣にいれば、毎日は勝手に騒がしくなる。


「よーし! 今日も月景さんとの愛を深めにいくよー!」


テンション高く操作する千夏を、私はポテチをつまみながら眺めていた。


月景――萩森月景。

四神・青龍の加護を受ける、クールな武士。ゲーム内人気No.1。

千夏の“推し”であり、生きがいでもある。


本気で彼女はこのキャラに人生リソースを注いでいる。

日常会話の八割が月景語り。

……推し活って、たぶん火力発電できる。


「うおおお! このシーン尊い! 心臓えぐられる!」

「千夏、落ち着け。夜中に叫ぶと近所迷惑」

「大丈夫! 私の愛はご近所にだって伝わるから!」

「迷惑しかないから!!」


そんなくだらないやり取りの、まさに最中だった。


突然、部屋がまばゆい閃光に包まれた。


「え、なにっ!?」


視界が真っ白になり、思わず叫ぶ私。

けれど千夏は――。


「キタコレ!! 異世界召喚イベント発生!!」


満面の笑みでガッツポーズ。

……この子、本当に危機感ゼロだな。


「いや喜んでる場合!? 光に包まれてるんだよ!?」


「美都わかってないなあ。これは『巫女と四神』の召喚シーン! 

ついに私もヒロインに!」


「やめて!? そんなフラグ立てないで!? 私まで巻き込まれる!」


足元が、ふわりと浮いた。

床の感触が抜けていく。

体が宙へ引きずられる。


「ええええええええっ!?」


――こうして私と千夏は、ポテチ片手に乙女ゲームの世界へ召喚された。

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