第2話 職業は鍵師

 やけに豪華な服を来た老人が一歩前に出た。服装からみて教会のトップ、恐らく教皇みたいなものだろう。


「私は聖教教会教皇、ラディア・ベルゼンと申します。準備は整っておりますのでどうぞこちらへ」


 教皇―――ラディアさんが扉の方に手を向ける。混乱はしていたものの、ラディアさんの言う事に従って扉の方へ向かう。案内されたのは、会議室のような大広間だった。巨大な円卓にクラスメイトたちが座り、扉から一番離れた席にラディアさんが座った。


「まず、ここは勇者様がたがいた世界とは異なる世界。名をストリマと言います。勇者様がたを召喚したのは我々聖教教会が唯一崇める神ゼシア様と、その信託を授かったこの国、バルディア王国です。この国、いやこの大陸では古くから隣の魔人領、つなりは魔王軍と戦争を長く続けています。近年は奴らが優勢となっており、我々人族は滅ぶ道を歩んでいた時に、唯一神ゼシア様があなた方を喚んだのです!」

「な、なんですかそれ!」


 ラディアさんの言葉に、周りがざわざわと騒ぎ出す。異世界と知って泣き出す者、未だにドッキリだと思い込む者。その中の一人、クラス委員長の倉橋くらはしひじりと僕らの担任、今成いまなり茉子まこが両手で机を強く叩いて立ち上がる。というかまっちゃん先生も召喚に巻き込まれてたのか。背が低すぎて気づかなかった。


「ふざけるのもいいかげんにしてください!なんのドッキリですかこれは!?これただの誘拐ですよ!?早く私たちを帰してください!」


 倉橋さんがラディアさんを指さして怒鳴る。言いたいことはわかる。僕たちは完全に被害者だ。僕だって文句を言いたい。


「むぅ……困りましたな……喚ぶこと自体はゼシア様の御力で行ったもの……帰すとなると私どもにはできません」


 随分自分勝手な神様だな、と思った。それなのにここまで崇拝されるとなると、この世界はおかしいのかもしれない。

 ラディアさんの言った、〝帰れない〟という言葉に、また周りが騒ぎ出す。未だに信じられない、ドッキリだ、と思っているひとが大半だ。


「……外を見てみてはいかがですかな?さすれば私が言っていることが真実だとわかるはずですぞ」


 ラディアさんは少し考えこんだ後、席を立ち提案をしてきた。座っているのが性に合わないせいか、疑いながらもみんなはすぐに立ち上がりラディアさんの後についていく。


「ラディアさん……質問があるんですがいいですか?」


 長い廊下を歩いているとき、天霧がラディアさんにあることを聞いていた。


「なんですかな?」

「魔人、と貴方は言っていました。人間以外に別の種族がいるんですか?」

「おや、貴方は私どもの話を信じていただけるのですか?」

「信じられないですけど……状況が状況なので、信じるほかないですよ」


 天霧の言葉に、ラディアさんは愉快そうに笑い質問に答えた。


「……この世界にいる種族は我々〝人族〟目下戦争中の〝魔人族〟森の奥深くに住んでいる〝妖精族〟森の中に住み妖精族と仲の良い〝獣人族〟そして、いるのかどうかすらわからない伝説の種族である”竜人族〟の5つ。お互いに不可侵を結んでいるのですが、我々人族は魔人族とだけは古くから争っています。が、数年前から魔物を従えはじめてからその近郊が崩れ。この状況を打破しようと、ゼシア様があなた方勇者様がたを喚んでくれたのです……おっと、これは先ほど申したのでしたな」


 ラディアさんが笑うと同時に、出口が見えてきた。光が射している門を、くぐり、僕たちは外に出た。


「……マジか」

「……すごい」


 神殿の長い廊下を超えると、そこは山の中だった。なんて雪国染みたことを言うつもりは無いが、それでも思ってしまった。山の頂上から見える景色は、僕たちが知っているものでは無かった。少し離れたところに、大きな街が見える。恐らく、あれがラディアさんが言っていたバルディア王国だろう。


「……先生、倉橋さん。これはもう信じるしかない……ですよね?」


 僕の言葉に、二人はポカンとしながら頷いた。










 慣れない山道を降りて、僕たちは宿屋に来ていた。王城で過ごすことになっているが、流石に半日では準備が終わらかったらしい。そんな僕たちは今―――。


「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ」


 ―――したくも無い勉強をしていた。なんの勉強かというと、この世界の文字の読み書きと明日攻略しにいく大迷宮、〝奈落アビス〟についてだ。どうしてこうなったかというと、話は数時間前にさかのぼる。


◇ ◆ ◇


「だ、ダメです!いくなんでもそんな危ないこと、させられるわけないじゃないですか!」


 まっちゃん先生が怒鳴っていた。ここが異世界で、帰れないことがわかって思考点を変えたのだろう。帰せから戦争には行かせられない、になっていた。


「自分たちの世界の揉め事は自分たちでなんとかしてくださいよ!」


 そうだまっちゃん先生、もっと言ってやれ。他がどう思っているかはともかく僕は危ないことはしたくない。死ぬかもしれないし。もしかしたら周りもまっちゃん先生に同調して反発してくれるかもしれない。だから頑張れまっちゃん先生。


「先生……俺は、俺たちは戦おうと思います。この世界の人たちは俺たちに助けを求めている……俺たちがこの世界に呼ばれたのもなにか意味があるのかもしれない」

「はっ!お前ならそう言うと思ったぜ蓮!もちろん俺もやるぜ!」

「……まぁ、帰れない以上こうするしかないみたいだし……やりますか」

「い、五月ちゃんがやるなら私もやる!」


 うんちょっと待った。この流れはおかしい。絶対におかしい。天霧お前どれだけ主人公になりたいんだよ。バカなの?実はお前バカなの?というかお前ら4人がそういうこと言うとどうなるのかわかってるのか?


「……あ、天霧がやるのなら俺もやるぞ!!」

「わ、私も!」

「俺もだ!!」

「神崎さんを危ない目にあわせるわけにはいかない!やろう!」

「どうせ帰れないんだ!やってやる!」

「そうだよ!」


 ほらこうなったよやっぱり。まっちゃん先生があわあわしてる。可哀そうに。


「ありがとうみんな。力を合わせてこの世界を救おう!そしてみんなで帰るんだ!」


 天霧の言葉に、僕とまっちゃん先生を除く全員が雄たけびをあげた。


 で、その後僕たちは王城にある兵士訓練所に連れていかれた。


「勇者御一考、協力に感謝する!私はゼシア王国近衛騎士団所属、第1騎士団団長をしているヴィグリア・バーリスだ!さっそくで悪いが、みんなに渡したプレートを見てほしい」


 ヴィグリアさんの言われた通りに、僕は渡されたプレートを見てみる。銀色のプレートは、少しツルツルしていて冷たい。鉄のような感触がするのにものすごく軽かった。


「それは〝ステータスプレート〟と呼ばれるアイテムだ。文字通り自分のステータスを映し出し、数値化してくれる。身分証明書にもなるので無くさないように!そしたらまずは登録するところからだ。ステータスプレートと一緒に渡した針で血を一滴垂らしてくれ。それで所有者が登録される。原理は知らんから聞くな」


 針で人差し指を刺し、親指で軽く押して血を滲み出させる。人差し指をプレートに垂らすと、魔方陣のようなものが浮かび上がり淡く光る。


【新凪時雨】

年齢 17歳 

性別 男 

レベル 1

職業 鍵師

技能 言語理解 開錠 閉錠

筋力 10

体力 10

耐性 10

俊敏 10

魔力 100

魔耐 100

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鍵を開ける事しかできない俺、奈落に捨てられた先で72の王を解き放ち復讐を開始する 34フルフル @34fulufulu

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