鍵を開ける事しかできない俺、奈落に捨てられた先で72の王を解き放ち復讐を開始する

34フルフル

第1話 異世界に召喚された……って感じか

 おかしい。これは絶対におかしい。僕は、いや僕たちは確かに教室にいたはずだ。なのに、なのに何故僕たちは今、知らない場所で知らない人たちに囲まれているのだろうか。というかここ神殿?だよな。で、なんで僕らここにいるんだっけ?そんなことを考えるために、僕は少し前にあったことを思い出すことにした。


◇ ◆ ◇


 月曜日とは憂鬱な日だ。そう思う社会人や学生はたくさんいるだろう。僕、新凪あらなぎ時雨しぐれもそう思う大多数の内の一人なのだから。休日明けの怠い身体を引きずりながら行きたくもない学校に行き、仲が良いわけでもないクラスメイトたちと過ごす5日間の最初の日だからだ。


「あ、天霧くん。おはよう!」

「へ?あ、はい。おはようございます」


 溜息混じりに教室に入ると、声がかけられる。その瞬間、周りにいた男子どもの視線が一気に俺に突き刺さって来る。声をかけてきた彼女こそが、俺が学校に来たくない原因、その理由の大半を占めている。

 神崎かんざきりん、彼女を言葉で表すならば品行方正、文武両道が当てはまるだろう。テストでは常に上位、誰にでも分け隔てなく接するコミュ力、整った容姿は、学校全体の憧れの的、マドンナと言ってもいい。そんな彼女は、何故か俺によく話しかけて来る。


「また遅刻ギリギリだよ?また夜更かししてたの?」

「いや、まぁ……そんな感じ、ですね、はい」


 神崎さんの笑顔が周りにいた独り身男子同志たちを焼き払う。少し離れている男子同志たちにも刺さっているんだ。目の前で受ける僕なんて骨まで残らないさ。そしてその都度、同志男子の殺気のこもった視線が刺さる。本当に勘弁してほしい。俺は目立つのが苦手なんだ。

 俺だって健全な男子高生だ、最初の方は勘違いもしたさ。「あれ?もしかしてこの人俺のこと好きなんじゃね?」って。まぁそんな考えは2秒後には変わっていた。3がいるからだ。

 

「おはよう新凪くん。毎朝のことだけど大変ね」

「……そう思っているなら助けてくれてもいいんじゃないかな?柳さん」


 やなぎ五月いつき、神崎さんの大親友。風紀委員所属で周りからは〝鬼姫〟なんて呼ばれてる。黒い長髪をポニーテールでまとめ、キッチリと着こなした制服なのにも関わらず、やけにカッコよく見えてしまう。男子から、ではなく女子人気がかなり高い。


「まったく、凛は優しいな」


 天霧あまぎりれん、いかにも主人公な感じの名前をしたこいつは、正義感の塊みたいなやつだ。女子好みの整った顔立ちにバスケ部で鍛えられた運動神経。もちろん女子だけでなく男子からも人気が高い。あとその金髪って地毛なの?それとも染めてるの?まぁそんなことは置いておいて毎度毎度僕に絡んでくるのはやめほしい。女子の視線が痛いから。


「まったくだ。やる気のないやつに何を言っても無駄なのにな」


 黒岩くろいわたけし、天霧の親友ともいえる奴。中学から一緒らしいが二人の関係性はなんというか長年連れ添った相棒感が半端ない。身長は190を超えていてガタイも良いから目の前に立たれるとすごく怖い。詰め寄ってこないでほしい男子1位だと思う。暑苦しいから。


「新凪もどうかと思うぞ?いつまでも凛のやさしさにつけこむのは。凛だっていつまでも暇じゃないんだから」


 僕が天霧を苦手としている一番の理由がこれだ。僕のことを何も知らないくせして僕が悪いと決めつける言い方をしてくる。それもしつこいほどにネチネチとした言い方でくるのだからたまったもんじゃない。天霧の発現はこの学年において絶対的な力を持つ。天霧が僕を悪いと言ったら、たとえ僕が何もしていなくても悪いことになる。


「おいおい、新凪のやつまた神崎さんに迷惑をかけてるよ」

「学校に来ないで家にこもっててほしいよね」


 天霧の発言に周りが同調し始めた。こうなるとホームルームが始まるまでは止まらない。溜息を深く吐いていると、柳さんが申し訳なさそうに両手を合わせている。


「……私が新凪くんと話したいから話してるだけなんだけどなぁ」


 神崎さんの何気ない一言が、教室に木霊する。天霧が驚いた顔をして神崎さんの方を見ている。それに呼応して、僕に刺さる視線に、殺意の他に嫉妬が加わったような気がした。


「え……あぁ……ほ、ほんとに優しいな、凛は……」

「え?新凪くんと話しているだけなのになんで優しくなっちゃうのかなぁ?」


 2人の掛け合いを見て僕は思った。この2人、ろいうか4人か。異世界に召喚されてくれないかなぁ、と。


「……は?」

「な……」

「な、なんだよこれ……!」


 足元が光った。床を見てみると、教室一杯に広がった魔方陣が紫色に輝いている。


「……マジで?」

「凛!みんな!早く教室の外に———」


 より一層魔方陣が輝き、僕たちの意識は途切れた。


◇ ◆ ◇


 で、今に至るというわけだ。客観的に見てみよう。この状況はつまり—――。


「異世界に召喚された……って感じか」


 数秒の間を起き、全身から汗が噴き出る。教室で冗談のつもりで思ったのに現実に起きてしまった。


「お、おい!どこだよここは!?」

「ドッキリ……だよね?そうだよね!?」


 周りを見見ると、クラスメイトたちがいた。僕と同じで動揺している。いきなり知らないところに来たら動揺するのもわかる。なんたってあの天霧や神崎さんたちですら動揺しているのだから。


「お待ちしておりました、勇者の皆様。〝ストリマ〟へようこそ」


 豪華な服を着た老人が、胡散臭い笑みを浮かべて笑った。

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