クリームパンと鋭利な愛
上永しめじ
「クリームパンと鋭利な愛」
君の手が好きだ。
朝の光が薄く差し込む寝室。
布団の隙間から、何かを探り当てるように伸びてくる、その君の手が好きだ。
いつも着ているシックな縞模様の袖口から、そこだけ真っ白な手袋をはめたような手が覗いている。
そのコントラストがあまりにも上品で、そして無防備で。
私が悪戯心でその指先をつついてみると、君は不機嫌そうに爪を立てる。
白い手袋の先から食い込む、鋭利な痛み。
「痛いよ」と呟くと、君はハッとしたように力を緩め、その凶器をすぐさま白さの中へ隠してしまう。
ああ、ただ驚いただけなのだなと、その不器用な優しさに胸が温かくなる。
君の手が好きだ。
焼きたてのパンのように柔らかくて、陽だまりのように温かくて、綿毛のようにふわふわしている。
時折、見えない何かを掴もうとするように、その白い手袋は開いたり閉じたりを繰り返す。
その仕草が可愛くて、私は思わず誘われるように指を差し出す。
すると君は、私の指をぎゅっと握り返してくれるんだ。
細い爪が皮膚に食い込むこともあるけれど、不思議だね。そんな痛みさえも、君がそこにいる証のように思えて、愛おしさに変わってしまう。
どうして君の手は、こんなにも可愛いのだろう。
その小さな白い手に包まれたいと願う。
その柔らかな手を、私の手で包み込みたいと願う。
大好きだよ。
言葉が通じなくても、体温だけで伝わるくらい、本当に大好きだから。
もう二度と、君と手を繋ぐことは叶わないけれど。
あの愛おしい痛みも、日向の匂いがした温もりも。
そして、ワイルドな縞模様の先にあった、あの気品ある白い輝きも。
私は一生忘れない。
あなたが私にくれた、言葉よりも確かな愛のすべてを、私は決して忘れないから。
おやすみ、可愛い可愛い私の猫ちゃん。
今度は夢の中で、その自慢の白い靴下を履いて、私とダンスを踊ってね。
クリームパンと鋭利な愛 上永しめじ @Shimejikaminaga
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