手は口ほどに物を言う

ろくろわ

手は話す

『目は口ほどに物を言う』このことわざを知っているだろうか。言葉に出さなくても、眼差しは言葉で話すのと同じくらい、相手に気持ちや本心を伝えているという意味である。そしてその言葉を借りて彼女に当てはめると、彼女の場合『手は口ほどに物を言う』というのが相応しいだろう。しかしこれだけを聞くとと思うかもしれないが、彼女に当てはまる『手は口ほどに物を言う』というのは、まるっきりそのまま、手が気持ちを話し出すという意味だ。

 例えば彼女と待ち合わせた時だ。彼女の声よりも先に、小さな身体から空に伸びた手が大きく振られ、私に「此処にいるよ!」と話しかけてくる。

 美味しいものを食べれば、繊細な指がきゅっと小さく丸まって口元を隠し小さく「美味しい」と教えてくれる。

 映画を見ている時は特によく喋り出す。オープンニングでは私に「静かにしろ」とほんのり赤い手から1本の指が伸びる。盛り上がってきたら「見てみて!」「すごい凄い!」「どうなるのかな?」と勢いよく私を叩きながら手が語る。ハラハラする場面では、私と握られた手が結末を聞きたがっている。

 私が仕事で落ち込んでいる時には「大丈夫だよ」と暖かい手が背中に語りかけてくれて、絡まる手は「大好きだよ」とはっきり教えてくれる。

 彼女の手は、言葉よりも早く気持ちを話し出す。


 そして今日は。


 彼女はさっきから手を夜空にかざすと、指もとに光る星を見ていた。そしてその手を私の前に何度も見せては再び空にかざす。言葉には出さずとも、パタパタ動く手が「嬉しい」と喋っているようだ。

 良かった。どうやら喜んでもらえたようだ。


 彼女の手は今日もよく喋る。

『手は口ほどに物を言う』

 まさに彼女のための言葉だ。



 了


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手は口ほどに物を言う ろくろわ @sakiyomiroku

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