第2話 ホテル・アイホワイトについて
涼君ママからの仕事の依頼について、銀河ハイツ102号室の天野家では、緊急会議が開かれた。
「率直に申しまして、私はお受けしようと考えています」
パパの発言に、大雅も咲良も驚きを隠せない。
「中尉! 自分は心配です。ママの秘密が地球人に露見したら、大変なことになります!」
と、大雅。
「仕事の途中で不具合が起きたらどう対処する? その場では手が出せないぞ」
と、咲良。
「まずは不具合が起きないよう、私が事前に手を尽くします。ママが地球人の行動を学習する絶好のチャンスであり、我が家が普通の家族であることを強くアピールできます!」
パパの力説にも、大雅は心配を隠さないし、咲良は腕を組んで「うーん」と唸るばかりだ。
「……それに、あのホテルにママを行かせる諜報活動上の理由があるのです」
「えっ!?」
大雅と咲良が声を揃える。
パパは二人にパソコンを開いて見せた。
「先日、この町に時空の裂け目があることを感知しました。その位置が『ホテル・アイホワイト』、ママが働く予定のホテルの中である可能性が高いのです」
パソコンに映し出されたこの町の地図上に、ポインターが点滅している。
「地球人にはまだ、時空間を往来する技術はありませんし、裂け目はごく小さいもので、何かが落ち込む可能性も低いと考えますが……」
「我々以外の宇宙人が、その裂け目から地球に侵入する可能性はある、ということか」
パパの言葉を咲良が受ける。
「先手を打っておく必要はありそうだな……」
腕組をした咲良は、少し考えてから顔を上げた。
「……よし。我が隊はこれから、作戦行動に移る」
パパと大雅が背筋を伸ばして、咲良を注視する。
「駅チカ『ホテル・アイホワイト』の時空の裂け目を修復するため、ママに潜入調査を命じる。裂け目を発見次第、修復せよ。中尉はママの状態を随時モニターし、異常の際の対応は一任する。私と軍曹は中尉の補佐にあたる」
パパと大雅が、敬礼で了解の意を示す。
「ママ、頑張る」
ガッツポーズでママも答えた。
「よし! 今夜は、ママの初単独任務の激励会だ!」
咲良が「おー!」と拳を上げる。
「え、おにぎりにしようと、ご飯炊いてますけど?」
湯気を立てている炊飯器を、大雅が指さした。
「激励会だから、パンダおにぎりにしよう!」
「……それって咲良がうれしいだけでしょ?」
ママの激励会なのに……と、大雅が口を曲げた時、炊飯器が「ピー」と、炊き上がりを知らせた。
銀河ハイツ102号室に住む天野さんちは、パパ、ママ、中学2年の大雅兄ちゃん、小学2年の咲良の、どこにでもある4人家族。
しかし彼らの本当の姿は、地球侵略をもくろむ宇宙生命体なのだ。
地球人に擬態して、地球のあらゆる情報を収集している諜報部隊、大佐(咲良)、中尉(パパ)、軍曹(大雅)、ママ、である。
彼らは地球人に察知されないよう、「普通の家族」擬態することに、全力を傾けている。
天野さんちの秘密を、地球人は誰も知らない。
ホテル・アイホワイトでの仕事始め、受け取った制服に着替えて、操は愕然とする。
七分袖のシャツに動きやすい黒パンツ。そして、エプロン。
エプロン??
「天野さん、大崎さん、こちらが客室係の
「山手です。よろしくお願いします」
涼君ママに紹介された女性、山手さんは50代くらい?
同じ制服で……客室係?
「……え、フロントじゃ無いの?」
涼君ママは眉間にクッキリとしわを作って、
「メッセージにはちゃんと客室係って書きましたよね」
と、キツめに言った。
うわっ、ちゃんと見てなかった。始める日と時間だけチェックしておけばいいと思ってた。
「よろしくお願いします」
咲良ちゃんママが頭を下げたので、操も仕方なく同じように頭を下げた。
つづく
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