第21話 サイドストーリー:ギルドに響く声
朝の冒険者ギルドは久しぶりに明るい声で満ちていた。
依頼掲示板の前には冒険者たちが集まり、
受付カウンターには次々と依頼達成の報告が届く。
受付嬢ミーナは、忙しさの中にも嬉しさを感じていた。
「ふぅ……でも、こういう忙しさなら大歓迎よね」
治癒が止まっていた頃の混乱が嘘のように冒険者たちは再び依頼を受け、
街には活気が戻りつつあった。
ギルドの扉が勢いよく開く。
「ミーナ、依頼達成だ」
低く落ち着いた声が響く。
入ってきたのは、街でも名の知れた Aランクパーティ《蒼牙》 の四人。
剣士ガルド、
弓使いリナ、
治癒師トーマ、
サポートのユウ。
実力も折り紙付き。
ギルドでも一目置かれる存在だ。
ミーナは笑顔で迎える。
「おかえりなさい、蒼牙のみなさん。今日も早かったですね」
ガルドが豪快に笑う。
「へっ、Aランクにかかりゃこの程度の依頼は朝飯前だ」
リナが肩をすくめる。
「ガルドそういう言い方やめなよ。でもまぁ今日は調子良かったね」
トーマは淡々と報告書を差し出す。
「依頼対象の討伐完了。証拠部位はこちらです」
ユウは荷物を下ろしながら息をつく。
「はぁ……今日も疲れた……」
ミーナは手続きを進めながら、ふとガルドたちの様子に違和感を覚えた。
報酬を渡した後、ガルドがミーナに身を乗り出す。
「ミーナ。ちょっと相談がある」
「相談?」
「俺たち人員を増やそうと思ってる」
「えっ、Aランクなのに?」
リナが頷く。
「ダンジョンの奥に行くならもう一人ほしいの。
ユウも頑張ってるけど、まだ若いしね」
「すみません、僕まだまだで」
「安定した戦力が必要だ。できれば落ち着いた大人の冒険者がいい」
ミーナは腕を組んで考えたが、ふとある人物の顔が浮かぶ。
最近ギルドに顔を出すようになった煙草をくわえた冒険者。
強さは未知数だけど落ち着いていて、優しくて、妙に頼りになる。
ミーナは隣の受付にいるエマに声をかけた。
「ねぇエマ、誰か心当たりない?」
エマは少し考え、静かに答えた。
「……最近よく来る、あの煙草の人は?ルイさんって言ったかしら」
ミーナは目を輝かせた。
「やっぱりエマもそう思う?」
「ええ。強さは分からないけどあの人、悪い人じゃないわ。
落ち着いてるし、パーティに向いてると思う」
ミーナはガルドたちに向き直る。
「心当たりがあります」
ガルドが腕を組む。
「ほう。どんな奴だ?」
「落ち着いてて、優しくて頼りになる人です」
リナが興味深そうに身を乗り出す。
「いいじゃん。会ってみたい」
ガルドはニヤリと笑った。
「よし、そいつを連れてきてくれ」
ミーナは頷き、ギルドを飛び出した。
ミーナは街を駆け抜けながらルイの姿を探していた。
まずは薬屋へ向かう。
軒先には乾燥した薬草が吊るされ、いつものように老婆が店番をしていた。
「おや、ミーナちゃんじゃないかい。どうしたんだい?」
「ルイさん来てませんでした?」
「さっき来たよ。煙草の葉を買っていったねぇ。
川のほうへ歩いていったよ」
「ありがとうございます!」
ミーナは礼を言い、川沿いへ走った。
川沿いの道に出ると朝日が水面に反射して眩しい。
しかし、ルイの姿は見当たらなかった。
ミーナは少し肩を落としつつ、商店街へ向かった。
商店街に入ると店先に武具や道具が並ぶロッソの店が見えた。
ロッソはミーナを見るなり手を振った。
「おお、ミーナちゃん!どうしたんだい?」
「ロッソさん、ルイさん来ませんでした?」
「ああ、来た来た!さっきな!」
「本当ですか!?どこへ?」
ロッソは笑いながら答えた。
「ダンジョンに行くって言って必要なもんだけ買っていったよ」
「必要なもの?」
ロッソは指を折りながら説明する。
「ロープ、保存食、油ランプ、火打ち石、水袋……まぁ最低限ってやつだな」
ミーナは思わず苦笑した。
「それにしてもあの人は不思議だねぇ。
必要なもんだけ買って無駄がない。
ああいうタイプは実は強いんだよ」
ミーナはなんか温かくなるのを感じた。
ロッソは袋を片付けながら言った。
「で、何か用だったのかい?」
「実はAランクパーティが人員募集しててルイさんを紹介しようと思って!」
ロッソは目を丸くした。
「おおっ、そりゃすげぇ!あの人なら、案外やれるかもしれんぞ?」
「はい!私もそう思います!」
結局、見つからずミーナがギルドに戻ると、
Aランクパーティ《蒼牙》の四人が待ち構えていた。
ガルドが腕を組んで言う。
「どうだった?連れてきたか?」
「すみません、ルイさんもうダンジョンに行ってしまってて」
「なんだ、もう行っちまったのか」
リナが肩をすくめる。
「まぁ冒険者だしね。でもどんな人なのか気になるなぁ」
ユウは不安そうに言う。
「大丈夫なんですか?その……強いんですか?」
「強いかどうかは分からないけど落ち着いてて、優しくて、頼りになる人です!」
「へっ、優しいだけじゃダンジョンは攻略できねぇぞ」
「だが落ち着いているのは悪くない。ユウのフォローにもなるだろう」
リナは興味深そうに言う。
「ねぇどんな見た目なの?」
「えっと無口で、煙草を吸ってて、ちょっとおじさんっぽいけど……」
「おっさん!? おいおい、Aランクの俺たちと組めるのか?」
「えっ本当に大丈夫なんですか?」
「ちょ、ちょっと!失礼よ!ルイさんはすごく頼りになるんだから!」
「まぁいい。明日ダンジョンの入口で待ち合わせだ。
そこで実力を見させてもらう」
リナも笑う。
「楽しみだね。どんな人なんだろ」
トーマは淡々とまとめる。
「明日の早朝に集合。遅れたら置いていく」
*
ギルドの喧騒が少し落ち着いた頃、
ミーナはカウンターの奥でエマと並んで書類整理をしていた。
エマが静かに尋ねる。
「ルイさん見つからなかったのね」
「でも明日ダンジョンの入口で会う約束になったの」
「そう。なら大丈夫ね」
「エマは、ルイさんどう思う?」
エマは少し考え、静かに言った。
「強さは分からない。でもあの人たぶん普通じゃないわよ」
「えっ?そうなの?」
エマはうなずいて続ける。
「気配が薄いの。冒険者ってある程度存在感があるものだけど
ルイさんは、まるで風みたい」
エマは微笑む。
「でも悪い人じゃない。むしろ……優しい人よ」
「うん、私もそう思う」
その頃ギルドの外ではAランクパーティ《蒼牙》の四人が、
明日の準備をしながら話していた。
ガルドが笑う。
「おっさんが来るってのが信じられねぇな」
リナが肩をすくめる。
「まぁミーナが推すなら悪い人じゃないんじゃない?」
「でもAランクの僕たちと、ちゃんと歩けるんでしょうか」
「明日になれば分かる。実力がなければそこで判断すればいい」
「明日が楽しみだな」
ギルドの灯りが消え、街は静けさに包まれた。
冒険者ギルドは今日もおっさんと共に @7023_100
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