第2話 400年前の魔術師

 「本名は嫌なんだよね〜鬼神って呼んでよ」



気持ちが悪いほどの作り笑顔

そして雰囲気に合わない声色

そんな悍ましさをまといながらながら彼は家から出てきた


たださっき話していた時とはまた違った異質な雰囲気

誘拐されかけ、目の前では非現実的な超常現象

怖がるべきはずなのに

興奮してしまっている自分がいる


後ろから葉音が聞こえる


 「宍戸龍一さんよぉ、死碁家のためにもよぉ」


火の玉を喰らって倒れていた男が立ち上がる

先ほどの攻撃をうまく凌いだようだ


 「お縄にかかってくれよなぁ」


刀を持ち勢いよく飛びかかる

突風がそいつの周りで起こるほどの勢い

その勢いのまま鬼神目掛け一直線に飛んでいく

しかし男は鬼神の前で突如ピタリと止まった


「固有魔術【鎌鼬】」


周りに嵐のような突風が巻き起こる

風の一つ一つがカミソリのように鋭くなり

それが鬼神に集まり吹きかかろうとした時


 「はぁ、なんで現代魔術師はこうも魅せたがりが多いのかね」


そういい右腕を上げた

人が当たり前にできるようにごく普通に指を鳴らした


あたり一面、爆音と突風に包まれる

鬼神の目の前に立っていた黒服の男は吹き飛ばされ木に激突

また一瞬のうちにカミソリのような風はなくなっていた

ただ鬼神の腕もたらーんと骨がなくなったかのように垂れ下がっている


 「やっべ、出力間違えたなこりゃ」


もう一人の黒服が瞬時に銃を取り出し鬼神に撃つ

しかし即座に反応し彼は左手を上げた

瞬間、空中に波紋のようなものが浮かび上がり

その波紋が弾丸を見事に跳ね返し男の腕に当てて見せた


 「こういう魔術をコツコツ時間をかけて極めるべきなんだよなぁ」


母さんのとは違う

おそらく魔術の本当の使用用途

それを目の当たりにして興奮が止まらない

得体の知れないこの人間に俺は、興味を抱いてしまっている


彼がこちらの方を向いた

先ほどの突風でマフラーが外れやっと素顔が見えた

青白い肌、全く焦点が合わず光のない眼その姿はまるで

死人そのものだった


 「死んでるのか、あんた」


 「まぁ部分的に?」


部分的に死んでる?

どういう事だ

そんなアキネーターみたいな死に方があるのか?

空いた口が塞がらない


 「ちょっとだけ私の話をしようか」


そういうと彼は近くの切り株に腰をかけ話出した


 「改めてきちんと話そうか。私は鬼神、見た通りの魔術師だ。生まれは400年程前だったけ、こう見えても昔は  ツラは良くて妻もいたんだよ。ただ私は普通に人間とは違って魔術の才が大いにあった。だからこうして自分  の肉体と魂を繋ぎ止め400年も生きてきた」


 「400年…だからあの本も」


てか説明が雑だな


 「そうだな、いろんな時代を見てきたよ。多くの人に出会い多くの人と別れてきた。ただこの術にも限界があっ  てね、肉体の劣化が激しくなり魔術を使うのも難しくなる。まだまだ知りたい事がたくさんあるのにね…」


この人は知りたがりなのか

色々な事を見てきて知ってきて、それでもなおさらなる事を知りたがる

好奇心の化身のような人間なんだ

ただそんな彼の気持ちも理解不能というわけではない


 「あの、もし俺に手伝える事が」


「【嵐突】」


急に後ろから轟音が聞こえた

彼の肩が突然抉りたらたかの様になくなっている

ただそれよりも彼は俺のことを信じられない様な形相で見ている

どうして自分の肩が抉られているのにそんな俺のことを見ている?

脇腹から風を感じる

足元に血が滴っている

脇腹を触ろうとしても感触がない

手が血で塗られていく

体が地面につき動かなくなった



_________________________



少年が目の前で倒れた


 「なーにが魅せるだけの現代魔術師だよ。こういう暗殺の方法も心得ているんだよカス」


自分の所為で罪のない人間を巻き込んでしまった

この傷ではおそらく助からない

魔術を早く施さないと


 「おい、お前こっち見ろよ」


どの魔術なら助かる?

それより今の私にどの魔術が使える?

今までの慢心、そして自分の肉体の衰えに苛立ちが止まらない

早く早く早く、助けなければ


 「お前こっち見ろって言ってるだろーが!」


体に切り傷が増えていく


 「そいつは死ぬ、助かるわけねぇだろ傷見たらわかるだろ」


この肉体のせいでまた…


この肉体じゃなければ少年は助かるんじゃないか

あの術ならもしかしたら、もしかするんじゃないか

媒介はまぁ私の肉体でいいか


「術式展開【魂魄天啓】」


 「テメェ何してんだ」


少年と私の周りを魔法陣の光が包んでいる

私の肉体が灰のように崩れていっている


 「魔術だよ、俺が400年かけて極めたね」


男が刀で斬りかかってくる

この体での最後の仕事をしよう


「鬼神流武術【牙突】」


この男はどうも吹き飛ばされるのが好きみたいだ

そろそろ完成か

やがて体が完全に崩れていく

魔法陣から暗い森を隅々まで照らす光が放たれる


 「さっきから俺のことを吹き飛ばし続けてふざけるな、、」


やはり俺の読み通りこの肉体ならあの体より複雑な魔術を簡単に使える

体も軽いし気分もいい、若いって偉大なんだな

先ほど俺が吹き飛ばしてあげた男がこちらを神妙な顔つきで見てくる


 「どうしたさっきまでの威勢はどこ言っちゃたんだよ、私をお縄にかけるんじゃねーの?」


 「なんでガキの方が立ってるんだよ、脇腹俺に貫かれたろ、宍戸龍一はどこ行ったんだよ」


なぜ人の話を聞かないだ、本名は嫌いって言ってるのに


 「はぁマジでやめてほしんだよな本名は鬼神って言ってくれよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鬼神奇怪伝 ねこきら @nekokiller

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画