鬼神奇怪伝
ねこきら
第1話 健全なる精神には健全なる魂が宿る
「悪いことしたら【きしん】が来るよ」
母は不思議な人だった
小さい頃俺が転んで怪我した時には不思議な力で怪我を治してくれた
妹のぬいぐるみが壊れてしまった時も針と糸を使わずに直してあげていた
そんなにすごい事ができるのに料理が下手で、いつもご飯を焦がしたりして笑われていた
そんな優しくて不思議な母は俺が6歳の頃、突然俺たちの前から消えてしまった
青霧家は毎年4月3日、母の命日に家族みんなで墓参りをしている
ただ今年は違った
妹がインフルにかかり父さんはその看病
そんなドタバタの中、姉さんはエジプトから帰るための日本行きのチケットを日にちをとり間違えてしまうという致命的ミス
そんなこんなで俺一人だけで行くことになった
「ごめんな母さん、今年は俺一人になちゃったよ」
そういい、母の墓跡に花を手向ける
「俺も今年から高校生なんだ、制服結構かっこいいんだよ。母さんにも見て欲しかったな」
まだ冬の寒さが残る4月の北海道
雪が花弁の上に落ちて潤いを与えている
「じゃ、まぁ来年はみんなで来るよ」
そういい母の墓を後にする
霊園の中、雪が降り続ける
多くの墓石が白く染まっている
ここにいる人は俺と黒服を着た3人ほど
人の少なさも加わりそこは絵画のような光景になっている
そんな少し幻想的な風景をぶち壊すかのようだった
目の先に少し不自然な雪の膨らみを捉える
近くに連れその膨らみの輪郭がはっきりとして物になっていく
膨らみの前に来た時、目の前に居たのは雪を被り倒れている人間だった
「そこ、、の少年よ、ちょっと手を、、、貸してくれないかな」
あまりの驚きに自分が何をするべきかわからない
手を貸すべきなのか?
というかまず生きているのか?
「手を、、立たせてくれ」
2回目の問いかけでやっと正気に戻り、俺はその人に手を差し伸べた
その人の腕はまるで木の枝を触っているかのように細く
鉄を触っているかのように冷たかった
「助かったよ、ありがとう少年」
先刻までぶっ倒れていたのが嘘みたいにひょうきんに話し出す
さっきは倒れていたからわからなかったがこの人、長く細い
その上顔がマフラーと肩ほどまである長髪で埋もれているから表情がよくわからない
「いやーこのままじゃ凍え死んでたよマジ卍で」
「大丈夫そうでよかったです」
言葉遣いが時代遅れ、死語だぞそれ
にしても薄気味悪い人だ、まるで生きている人間と会話をしている気がしない
周りの気温がさらに下がるのを感じる
人に擬態した化け物のような雰囲気
早くこっから離れよう
「まぁ本当に大丈夫そうならいいです、じゃあ僕はここ…」
「ちょーと待ってくれよ」
食い気味に話をかぶせられた
「えっと、なにか不手際が?」
「そりゃ命の恩人にお礼をしないわけないだろ、こっから私の家は近いんだすぐそこの森の中な、行こうぜ」
(今あんたが俺にできる最大限のお礼は俺に関わらないことだ)
本音がでかけた
正直、関わりたくない今すぐにでもホテルに帰りたい
こんなやつと関わりたくないのに、断ると何をされるとわからない
今すぐ引き返せ俺、断るんだ、言え、言え、言え
「ぜ、是非行かせてもらいます」
「よっしじゃ行くか〜」
あぁ俺は俺の事を一生恨むよマジで
そのまま霊園のすぐそこの森の中にある一軒家に連れてかれた
ずっと呪いの家とかやばい怨霊とかが出てくる和風のボロ屋を想像してたけど実際に行ってみると洋風の普通の一軒家屋だった
「さぁさぁ上がって上がって」
玄関には何百冊と積まれた本
その中には俺も知っている本から超昔に発行されたマイナーなものまで
「これって、赤い鳥の創刊号」
「えマジでそれ知ってるのううれし〜それ気になってて発売当日に買いに行ったんだよねもし欲しいなら全然あ げるよ〜」
マジかよ!
こんなに状態がいいのにもらっていいのかよ
うわ嬉し…
「え、今なんて言いました」
「うん?あげるよって」
「違うその前です」
「発売当日に買った」
は?
この本、発売は大正時代だぞ
もし本当なら少なくとも102年は生きているぞ
「じゃああんた今何歳だよ」
「まぁいいじゃんそういうことは」
受け流され、有耶無耶にしようとしてきた
流させない有耶無耶にさせないと思い、質問を続けようと思った時
「ほらやるよ」
そういうと本が一人でに浮かび出し俺の前に浮かんでいる
俺は弩級の文系だがこれだけはわかる、明らかに物理法則も重力も無視している
この光景を見るのは実は初めてではない
かつて母さんがやったかのように
なんとなくこの人間の正体はわかってきた
「あんた、魔術師か」
「え、知ってるの?魔術の事」
顔は見えないが反応で驚いているのはわかった
「母さんがその筋の人でな、俺にはできないけどなんとなくは知ってるよ。人智を超えた技など人にできない事 を簡単に成し得る存在、それが魔術師だって」
「そんなすっごいもんじゃないけどね〜」
そういいカップとポットを宙に浮かし紅茶を入れる
「お茶は?飲める?」
「猫舌だけどまぁ」
お茶が注がれる音が部屋に響く
二人とも一言も放つ事がない
神妙な空気が他漂っていた
「こんなこと聞くの野暮かもだけど、なんでこんなとこ住んでるんですか」
その人は紅茶を差し出し丁寧に話出した
「昔に家族と喧嘩しちゃって家を出たんだけどね、今更戻ってこいって俺が必要だっていうのよ。まぁー呆れち ゃうよね。それでずっと無視し続けたらあっちは無理矢理連れていこうとしてきて、俺も体が弱いから迎え撃 つってわけにも行かず隠居中ってわけ」
話し方はひょうきんだし嘘くさいしなんか適当な物語を語って誤魔化された感じがした
「だから、人と話すのも久しぶりだったよ、嬉しかった」
きっとこの言葉は本当なんだろう
チャイムの音
16時30分の知らせが鳴り始める
空も暗くなってきている
「宿が少し遠いんで、そろそろ帰ります」
「あぁ楽しかったよ」
そういいその場をを離れて家を出た
ひょうきんで嘘くさい人
だが少しさみしそうな人
そんなことを思っていたら自分の足はすぐ森の出口にあった
森を出て霊園の入り口に帰ってきた時くらいのことだった
「君今、その森の中からから出てきたよね」
突如首に凍てついたに冷たいものが当たる
目の向きを変えなくても視界に入ってくる
これは刀だ
「君、宍戸龍一と接触したろ」
なんとくなく自分が面倒なことに巻き込まれ始めた事がわかる
「嫌だなぁ俺はただそこの森に寄り道しただけですよ、誰ですか?宍戸龍一?聞き覚えないですけどね」
黒いスーツを着た二人組
片方は刀を持っており、片方はメリケンサックを持っている
「あの森から出てきたろ、あそこは普通入ったら出て来れないんだよ」
「でもお前はノコノコと出てきたろ何もなかったかのように出てきた」
質問のたびに刀身を首に押し付けてくる
命の危機を正直感じた
「わかるか、お前はあいつから通行許可証が降りたんだ、だからあそこで迷ってない。お前は今から俺達のナビ になれ」
ひしひしとこいつらの圧が伝わる
恐怖で体が震えている
妹や友人が東京にいる限り死ぬわけには行かない
「わかりました案内しますよ」
宍戸龍一っておそらくあの人の事だろう
そしてこの人達はそれを追っている家の人
もう帰りたいと思いつつ、泣く泣く森に踏み込んだ
さっきと同じ道を歩きまたあの家に着いた
「おいあいつを呼べ、知り合いとかなんだろ」
小声で耳打ちされる
そう言えば俺さっきまであの人の名前も知らなかったな
こうなるなら自分から教えて貰えばよかった
「宍戸さーん、お迎えきてますよー」
ドアが一人でに開く
陰湿、奇妙、奇怪、恐怖、狂気、これらの言葉じゃ足りないほどの違和感を感じ
家から吹き飛ばされそうなほどの突風が吹き出す
『炎冠』
隣にいた黒服にどちらも炎の玉が直撃する
「やめて欲しいんだけどな本名は〜」
長く細いシルエットが家から出てくる
「鬼神と呼んでくれよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます