1-4.
「今から残っている近辺の監視カメラの映像を、総当たりで自動解析に掛けます。映りこんだ車のナンバーを記録させ、他の場所の映像と照合して一致するナンバーがあれば、当たりですね」
「それ、どのくらいで終わる?」
「そうですね……照合まで含めて三時間もあれば可能かと」
「
「え、でも、皆さんはまだ続けるんですよね……?」
綾希子としても、力不足ながらこのSIRの一員として、自分だけが休むのは心苦しいものがあった。それに加えて、彼女には上への報告の必要もあり、彼らのやり取りをできるだけ聞き逃したくないという思いもあった。
「オレたちもちゃんと休みますから、心配しないでください。香村さんもしっかり休んで、また明日来てください」
「……はい。お疲れさまでした」
四人に見送られながら部屋を後にした綾希子は、彼らとの間にある疎外感をどうしても意識せずにはいられなかった。当然、彼らとは育ちも違えば能力も違う。役目も違う。それでも、SIRの一員としてもっとできることがあるんじゃないか。今のままでは、この先もずっと、本当の意味でSIRの一員にはなれない気がする。そんな事を考えていた。
「さて、わたしはもうひと眠りするかなー」
「お前、さっきまで寝てただろ。また寝るのか?」
部屋の奥へ行こうとする科乃に、硝磨は呆れたようにため息を吐いた。この部屋の奥にある扉の向こうは居住スペースになっており、彼ら四人はそこで生活している。徹底して彼らを外に出さないようになっている仕組みを、彼らも理解して、それを受け入れている。彼らにとってみれば、“スクール”にいた時とあまり生活に変わりはないので、特に抵抗もなかった。
「いいでしょ、別に。休める時に休まないと」
「では私も、この間にシャワーを浴びてきますかね」
「アタシはなんか夜食作っとくから、皆で食べなよ」
「いや、夜食の前に夕食を食えよ……」
解析、照合の結果が出るまでの間を一時の休息として、彼ら四人は居住区へと入っていった。
仕方なく、硝磨は自分の部屋に戻ってもう一度情報の整理をすることにした。
最初の事件は東京都で起きた。昨年十一月二十五日、
その四日後の二十九日、そこから四キロほど離れた
そして十二月三日、
犯行はすべて夜間に行われたものと見られ、死因はいずれも頸動脈切断による失血死。遺体は切断されていたものの、切断された部位はすべて同じ場所で発見され、隠そうという意思は見られなかった。近隣の監視カメラの映像は消されており、犯人の特定までにおよそ二か月を要した。
現場の目撃情報から人物像、足取りを洗い出し、特定された犯人は、埼玉県
二つ目の事件は神奈川県。昨年十二月一日、
その三日後の十二月四日、
十二月十一日、川崎市
神奈川県警は手口の同様さと、いずれも腹部を開かれ、卵巣を摘出されていたことから、連続殺人事件として捜査を進める。被害者の殺害された時刻は一様ではなかったが、死因はすべて頸動脈切断による失血死。
現場付近で目撃情報のあった男を重要参考人として手配するが、男は横浜市
三つ目の事件は埼玉県。一件目は、今年一月の二十一日、
その五日後の一月二十六日、所沢市
しかし、一月三十一日、
そして現在進行中と思われる四つ目の事件は再び神奈川県で発生した。最初の一件は二月五日、横浜市
二件目は二月二十日、
そして本日、三月十五日、三件目である事件が起きた。
この四つ目の連続殺人事件の犯人が、恐らくこの数日後に殺害されるであろうということだが、案の定、神奈川県警では犯人の特定はおろか、人物像も洗い出せていない。
(県内の三件の事件はそれぞれの現場が思ったより近いな。普通はこれだけの狭い範囲だと犯人も特定されやすいが……。そして犯人はいずれも無職の四十代男性、か。それに対して殺害されているのは二十代女性。“母親”……。四十代男性の母親であれば、現在は六十代くらいと推測されるが、“スクール”は発足して四、五十年で消失した研究組織だ。その出身者が六十代とは考えにくい。それに、初期の頃の検体はまだ遺伝子操作の副作用が強く、長くは保たなかったと聞く。となると、“犯人”はオレたちと同様二十代、ともすれば十代ということも……)
“犯人”の性質は恐らく“母親”で間違いないはずなのだが、あまりしっくりと来ない。それがもどかしくて、硝磨は一人、部屋で悶々としていた。そこへ、扉をノックする音が聞こえ、入室を促す。
「室長、シャワー空いたよ」
訪問者は、その濃い茶色の髪を、まだしっとりと湿らせたままの科乃だった。司の次は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます