第3話
――フラムヴァーレ城――
翌朝、シャルルはカイラルに叩き起こされ、そのまま朝食を取っていた。
カチャカチャ。
ズゾゾ。
音を立てて、スープをすするシャルル。
「……王子。そろそろ、食事の作法を覚えてはいかがですか」
カイラルが、呆れたように言う。
「まあまあ、いいじゃないか。作法なんて。人は中身だぞ、カイラル」
軽口を叩きながらも、シャルルの思考は別のところにあった。
――アヴニルのことだ。
カイラルは信頼できる男だ。
だが、あれは俺から話すことではない。
そう結論づけ、シャルルは胸の奥にしまい込む。
「この後、また義勇団に顔を出すよ」
「……でしょうね」
カイラルは深くため息をついた。
――フラムヴァーレ義勇団駐屯地――
アヴニルは、フラムヴァーレ義勇団の駐屯地で暮らしていた。
「アヴニル!また剣の稽古かよ、真面目だねえ!」
朝っぱらから酒を飲んでいる大男、アルドフと、
その隣でニヤニヤしている細身のジェドが声をかける。
「シャルルの力になりたいからね」
アヴニルは、以前の無愛想さが嘘のように、自然に答えた。
「すっかり無謀王子になついちまったなぁ。
ま、俺らも人のこと言えねーけどよ」
二人は酒を飲みながら、豪快に笑う。
「おう、お前ら。ちょっとアヴニルに用がある」
シャルルが駐屯地に姿を現し、アヴニルを手招きした。
二人きりになると、シャルルは切り出す。
レキシとその力について。
「ヒストリアボードを作った先代のレキシと、僕は別人だよ」
「だろうな。あれは、俺が生まれる前から空にある」
「昨日も言ったけど、今の僕は自在に未来を操れない。
それに……たぶんだけど、僕以外にもレキシはいると思う」
「……他にも、レキシが?」
シャルルは、わずかに眉をひそめた。
それ以上、話は深まらなかった。
「シャルル、剣の稽古をしてくれない?」
そうアヴニルが口にし、シャルルはアヴニルの稽古に付き合うことにした。
「おいおい!シャルルとアヴニルがやり合うらしいぞ!」
義勇団の面々が集まりだす。
「シャルルに五百ヘイルだ!」
「いやいや、アヴニルも伸びてるぞ!俺はアヴニルだ!」
二人は向かい合い、剣を構える。
アヴニルが右から薙ぐ。
シャルルはそれを受け止め、距離を取る。
猛攻を仕掛けるアヴニル。
だがシャルルは、巧みに身をかわす。
次の瞬間、シャルルは地面を蹴り、土を跳ね上げた。
アヴニルは反射的に目を瞑ってしまう。
その隙に、アヴニルの首元へ剣先を向けるシャルル。
「俺の勝ちだ。惜しかったな!」
「ずりいぞー!」
野次と笑い声が飛ぶ。
アヴニルとシャルルも、顔を見合わせて笑った。いつもと同じ平和な一日が過ぎる。
――だが、この日。
ヒストリアボードは、新たな文字を書き記すこととなる。
次の更新予定
フラムヴァーレ戦記 無謀王子とレキシ @kotetomato
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