第2話 どん底の誕生日(2)


足元がふらついた、そのとき。




「危ない!」




腕を掴まれ、




体が前に倒れ込む。




気づいたら、




硬い胸に顔を押しつけていた。




「……え?」




顔を上げると、




そこには見上げるほど背の高い男。




スーツ姿で、




びしょ濡れなのに、




息をのむほど整った顔をしていた。




「大丈夫ですか?」




低く、落ち着いた声。




「す、すみません……」




慌てて離れようとしたけど、




足に力が入らない。




「無理しないで。




立てます?」




そう言って、




彼は自然に私を支えた。




細い体なのに、




腕は驚くほどしっかりしている。




「……俺、蓮って言います」




その名前を聞いた瞬間、




胸が、理由もなくざわついた。




――この出会いが、




私の人生を変えるなんて、




まだ知らなかった。

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