第3話
あなたは半時間ほど悪戦苦闘しただろう。言葉で呼びつけるのを諦め、物音をたてる作戦に出た。
左手を動かす。つかめるものはない。布団から出した手で畳に爪を立て、左足の踵にも力を入れて、少しずつ重い体を布団の外へとずらしていく。自分の体がこんなにも重いものだったのかとあなたは思ったことだろう。
そうしてあなたはさらに半時間ほどかけて壁にたどり着き、そこにあった棚をまさぐり、手に触れる小物をつかんではあらぬ方向に投げつけた。あるものは布団の上に吸い込まれ、あるものは畳の上を滑っていき、そしてあるものは反対側にある書棚に当たってことりと弱い音をたてた。
どのくらいそんなことをしたのだろう。やがてふすまが開いた。顔を出したのは妻ではなく長男の嫁だった。
お義父さん――。
人が発した言葉なら理解できる。あなたはそう認識したがあなたの口から出たのはやはり獣の唸りだった。
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